第131話 文化祭がやってくる
夏休みが終わってしばらく経った、ある日の朝。
窓から差し込む日差しはまだ少し暑いけれど、吹き込んでくる風には、ほんの少しだけ秋の気配が混ざっていた。
「ねぇ、こむぎ! 知ってる?」
教室に入るなり、桃華がこちらへ駆け寄ってきた。
「ん? どうしたの?」
「もうすぐ文化祭だよ!」
「あ、そういえば!」
言われてみれば、廊下の掲示板にも文化祭の日程が貼られていた気がする。
けれど、夏休み明けの学校生活に慣れることで頭がいっぱいで、そこまで意識していなかった。
「楽しみだね!」
「うん! 文化祭って、どんなことするんだろうね?」
「食べ物とか売ったりするのかな? それとも、なんかゲームとか?」
「クラスによって違うんじゃない?」
二人でそんな話をしながら席に着く。
周りを見れば、ほかのクラスメイトたちも文化祭の話題で盛り上がっていた。
「うちのクラス、何やるんだろうな」
「普通に考えたら、喫茶店とか?」
「いや、せっかくだし、もっと面白いのがいいだろ!」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
まだ何も決まっていないのに、みんなの顔はどこか楽しそうだった。
やがて、朝のホームルームが始まった。
「はい、みんな席についてー」
担任の先生が教室に入ってくると、少しずつ話し声が小さくなっていく。
「今日は連絡事項がある。来月、文化祭が開催されるのは知っているな?」
その言葉に、教室の空気が少し変わった。
「今年も例年通り二日間の開催だ。各クラスで出し物を企画してもらうことになる。詳しいルールは後で配布するから、まずはクラスで何をやるか考えておくように」
「二日間!?」
「やったー!」
「何やろうかな!」
先生が話している途中から、あちこちで小さな歓声が上がる。
「こらこら、まだ説明の途中だぞ」
先生に注意され、みんなが慌てて口を閉じた。
けれど、楽しみな気持ちは隠しきれないらしい。
先生が出ていった途端、再び教室がにぎやかになった。
「二日間もあるんだって!」
桃華が目を輝かせている。
「うん。いろんなところを回れそうだね」
「それも楽しみだけど、うちのクラスの出し物も大事だよ!」
「確かに!」
自分たちのクラスで何をするのか。
そう考えると、なんだか急にわくわくしてきた。
せっかくの高校生活で、初めての文化祭。
どうせなら、みんなで楽しめるものがいい。
そんなことを考えていると、前の席に座っていた凜空が振り返った。
「二人は何やりたい?」
「うーん……。まだ全然決めてないかな」
私が答えると、桃華が勢いよく手を挙げた。
「はい! 私は食べ物系!」
「お、いいじゃん。何がいいの?」
「たこ焼きとか、クレープとか!」
「食べたいだけじゃん」
「だっておいしいじゃん!」
桃華が頬を膨らませる。
その様子を見て、凜空が笑った。
「まぁ、確かに食べ物系は楽しそうだけどな。ほかにもいろいろあるし、みんなの意見を聞いてから決めようぜ」
「そうだね!」
凜空の言葉に、私も頷いた。
その後も、クラスのあちこちからいろいろな案が飛び出してきた。
喫茶店、ゲームコーナー、射的、迷路。
中には、聞いたことのないような企画まであった。
「迷うねぇ……」
「ね。どれも楽しそう!」
桃華と顔を見合わせる。
まだ何も決まっていない。
けれど、だからこそ、これから何が決まっていくのか楽しみだった。
放課後になれば、きっと本格的に話し合いが始まるだろう。
高校最初の文化祭。
その準備が、いよいよ始まろうとしていた。




