↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/136

第123話 猫カフェ

休日。


駅前で、こむぎは辺りを見渡していた。


今日は遥斗と約束していた猫カフェの日。


少し早めに着いたこむぎは、駅前の時計を見ながら遥斗を待っていた。


「……まだかな?」


そう呟いた時だった。


「こむぎ!」


聞き慣れた声が後ろから聞こえる。


振り返ると、遥斗が手を振りながらこちらへ歩いてきていた。


「遥斗先輩!」


「ごめん、待った?」


「いえ、私も今来たところです。」


「そっか。」


遥斗は安心したように笑う。


「じゃあ、行こうか。」


「はい!」


二人は駅を出て、猫カフェへ向かって歩き始めた。


「どんな猫がいるんでしょうね。」


「俺も楽しみ。」


遥斗は歩きながら、少し嬉しそうに笑っている。


「前から行ってみたかったんだよね。」


「そうなんですか?」


「うん。」


遥斗が頷く。


「猫好きなのに、猫カフェはまだ行ったことなかったんだ。」


「私もです。」


「じゃあ、今日は初猫カフェだね。」


「初猫カフェ?」


「うん。」


「なんか変な言い方ですね。」


こむぎが笑う。


「まぁいいじゃん。」


遥斗も笑い返す。


しばらく歩くと、目的の店が見えてきた。


店の外には猫の写真やイラストが飾られている。


「ここだ!」


遥斗の声が少し弾む。


「猫の絵、いっぱいありますね。」


「ほんとだ。」


二人は顔を見合わせて笑った。


店内へ入り、受付を済ませる。


扉を開けた瞬間、ふわっと猫の匂いがした。


そして――。


「わぁ……!」


こむぎの目の前を、一匹の猫がのんびり横切っていく。


その後ろから、別の猫が追いかけるように歩いてきた。


「いっぱいいますね……!」


「見て!」


遥斗もすぐに猫へ目を向ける。


「白い猫いる!」


少し離れたところに、真っ白な猫が座っていた。


「かわいい……。」


こむぎがしゃがみ込む。


「触ってみる?」


「はい。」


二人が近づく。


遥斗がそっと手を伸ばすと、白い猫は一度だけ遥斗の手を見た。


「……。」


遥斗はそのまま動かずに待つ。


すると、猫がゆっくりと近づいてきた。


「おっ。」


鼻先を遥斗の手に近づける。


「来た!」


遥斗の顔がぱっと明るくなる。


猫はそのまま遥斗の手に頭を寄せた。


「かわいいなぁ。」


遥斗が優しく頭を撫でる。


「遥斗先輩、すごい嬉しそう。」


「だって猫だよ?」


「ふふっ。」


こむぎも笑う。


「こむぎも触ってみなよ。」


「うん。」


こむぎが手を伸ばす。


指先が猫の背中に触れる。


「……ふわふわ。」


柔らかな毛が指の間をすり抜ける。


「気持ちいいですね。」


「ね?」


遥斗も嬉しそうに頷いた。


しばらくすると、白い猫は二人から離れて窓際へ向かっていった。


その背中を見送りながら、遥斗が笑う。


「また後で遊ぼうな。」


「猫に話しかけてる。」


「いいじゃん。」


こむぎはまた笑った。


その後も二人は店内を歩きながら、いろいろな猫を見て回った。


窓際では、茶色い猫が丸くなって眠っている。


「この子、寝てますね。」


「気持ちよさそう。」


猫は小さく耳を動かしただけで、目を開けることもない。


「起こしちゃダメですよね。」


「うん。」


遥斗が小声になる。


「そっとしておこう。」


二人はその場を離れ、別の猫のところへ向かった。


すると――。


「わっ。」


こむぎの足元に、一匹の猫が近づいてきた。


猫はこむぎの足に身体を擦りつける。


「かわいい……!」


こむぎがしゃがむと、猫はさらに近づいてくる。


「すっかり気に入られたね。」


遥斗が笑う。


「そうかな?」


「うん。」


こむぎが頭を撫でると、猫は気持ちよさそうに目を細めた。


「いいなぁ。」


遥斗が少し羨ましそうに言う。


「遥斗先輩も触ってみます?」


「もちろん!」


遥斗がすぐにしゃがむ。


「おいでー。」


手を差し出す。


しかし、猫は遥斗の方へ行くどころか、こむぎの足元から離れない。


「……あれ?」


遥斗が固まる。


「来ない。」


「ふふっ。」


「こむぎに負けた。」


「猫に好かれるのって難しいですね。」


「そうだね。」


遥斗は苦笑する。


「次は絶対来てもらう。」


「頑張ってください。」


二人は顔を見合わせて笑った。


その後は猫じゃらしを使って、猫たちと遊ぶことにした。


「この子、めっちゃ元気ですね!」


一匹の猫が猫じゃらしを追いかけ、床を走り回っている。


「ほんとだ!」


遥斗が笑いながら猫じゃらしを動かす。


猫が勢いよく飛びついた。


「おお!」


「すごい!」


「こむぎもやってみる?」


「やります!」


こむぎが猫じゃらしを受け取る。


少し左右に動かすと、猫の目が猫じゃらしを追いかけた。


「……。」


こむぎが止める。


猫も止まる。


「今だ!」


こむぎが動かす。


猫が勢いよく飛びついた。


「わっ!」


こむぎが思わず後ろへ下がる。


「ははっ!」


遥斗が笑う。


「びっくりした?」


「びっくりしました!」


「でも楽しそう。」


「はい!」


こむぎも笑った。


気がつけば、店内に入ってからかなり時間が経っていた。


「そろそろ出る時間ですね。」


こむぎが時計を見る。


「もうそんな時間?」


遥斗も時計を見る。


「早かったなぁ。」


店内を見渡す。


まだ遊び足りないような気もする。


「また来たいね。」


「はい!」


こむぎは元気よく頷いた。


二人は店を出る。


外へ出ると、空は少し赤く染まり始めていた。


「楽しかったですね。」


「うん!」


遥斗が笑う。


「思ってたよりずっと楽しかった。」


「私もです。」


「猫、いっぱいだったしね。」


「また行きたいです。」


「じゃあ、また行こう。」


遥斗が笑う。


「今度はもっと猫に好かれるように頑張る。」


「ふふっ。」


こむぎが笑う。


「応援してます。」


「ありがとう。」


二人は駅へ向かって歩き始める。


しばらく歩いたところで、遥斗が何かを思い出したように口を開いた。


「そうだ。」


「はい?」


「今日撮った猫の写真、後で送ろうか?」


「いいんですか?」


「うん。」


遥斗がスマホを取り出す。


「じゃあ、連絡先交換しよう。」


「あ、はい!」


こむぎもスマホを取り出す。


二人は連絡先を交換する。


「これで送れるね。」


「はい!」


こむぎも嬉しそうに頷く。


「私も撮った写真、送りますね。」


「ほんと?」


「はい。」


「じゃあ、楽しみにしてる。」


遥斗が笑う。


駅前に着く。


「今日はありがとうございました。」


「こちらこそ!」


遥斗が明るく笑う。


「楽しかったよ。」


「私も楽しかったです。」


「じゃあ、また学校で!」


「はい!」


遥斗が手を振る。


こむぎも手を振り返す。


「またね!」


二人はそれぞれの帰り道へ歩き出した。


こむぎは歩きながら、今日のことを思い返す。


猫に触った時のふわふわした感触。


猫じゃらしに飛びついてきた猫。


そして、楽しそうに笑っていた遥斗。


「……楽しかったな。」


こむぎは小さく呟いた。


夏休みが終わったばかりの学校生活。


そこにまた一つ、楽しみな思い出が増えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。