第119話 新体制
放課後。
体育館には、久しぶりに部員全員が集まっていた。
夏大会が終わり、三年生が引退してから初めての本格的な練習。
いつもより少しだけ静かな空気が流れている。
「みんな、集まってくれ。」
湊が声をかける。
選手たちがコートの中央へ集まっていく。
こむぎと桃華も、マネージャーとしてその場に並んだ。
「今日は練習を始める前に、話しておきたいことがある。」
湊が全員を見渡す。
「三年生が引退して、今日から俺たちの代になる。」
その言葉に、一年生たちも真剣な表情になる。
「そこで、これからの部をまとめる役を決めた。」
少し間を置いてから、湊が口を開く。
「俺が部長をやることになった。」
「おお!」
蒼が声を上げる。
「湊先輩なら安心ですね!」
颯馬も頷く。
「確かに。」
凜空も笑顔になる。
「よろしくお願いします、湊先輩!」
こむぎも頭を下げる。
「よろしくお願いします!」
桃華も続く。
「こちらこそ、よろしく。」
湊は少し照れたように笑った。
「正直、俺一人で全部できるとは思ってない。」
「だから、みんなに協力してほしい。」
その言葉に、一年生たちが頷く。
「そして、副部長は瑠衣。」
湊の隣にいた瑠衣が一歩前へ出る。
「よろしく。」
「瑠衣先輩もよろしくお願いします!」
こむぎが元気よく言う。
「うん。こっちこそよろしくね。」
瑠衣が笑う。
「湊と一緒に、ちゃんと部をまとめていくから。」
「はい!」
桃華が元気よく返事をする。
遥斗も二人の方を見ながら笑った。
「二人なら大丈夫そうだね。」
「遥斗、お前もちゃんと協力してくれよ。」
湊が言う。
「もちろん。」
遥斗は軽く手を上げる。
「俺にできることならね。」
莉音も頷く。
「私もマネージャーとして、できることは手伝うね。」
「ありがとう。」
湊が笑う。
その様子を見ていたこむぎは、少しだけ安心した。
三年生がいなくなったことで、体育館の雰囲気は確かに変わっている。
けれど――。
新しい部長と副部長が決まったことで、これからの部活が少しずつ形になっていく気がした。
「じゃあ、今日は軽めに始めよう。」
湊が手を叩く。
「一年生、アップから!」
「はい!」
一年生たちがコートへ向かう。
蒼がボールを持ちながら、隣の颯馬を見る。
「新しい部長が決まると、なんか雰囲気変わるな。」
「そうだな。」
颯馬が頷く。
「俺たちも頑張らないとな。」
「だな!」
二人が走り出す。
その後ろでは、佐久も静かにアップを始めていた。
悠真は軽くストレッチをしながら、湊を見る。
「湊先輩、これから大変そうですね。」
「そうだな。」
湊が苦笑する。
「でも、みんなが手伝ってくれるなら何とかなるだろ。」
「はい。」
悠真は頷いた。
凜空も笑顔で声をかける。
「俺たちも頑張ります!」
「頼むぞ。」
湊が笑う。
少し離れたところでは、こむぎと桃華がボトルの準備をしていた。
「新しい部長、決まったね。」
桃華が言う。
「うん。」
こむぎも頷く。
「湊先輩なら、みんなをまとめてくれそう。」
「そうだね!」
桃華が笑う。
「瑠衣先輩もいるし、安心だね。」
「うん。」
こむぎはコートを見る。
湊が一年生たちに声をかけている。
瑠衣はその様子を見ながら、必要なところだけフォローしている。
その姿は、今までとは少し違って見えた。
「部長って、大変そうだね。」
こむぎがぽつりと言う。
「こむぎもいつかやってみる?」
「えっ、私?」
「マネージャー部長!」
「そんなのあるの?」
二人で顔を見合わせる。
そして――。
「ふふっ。」
「ははは!」
思わず笑い声がこぼれた。
「こむぎ、桃華!」
コートから声が飛んでくる。
「ボールお願い!」
「あ、はい!」
こむぎが急いでボールを取りに行く。
桃華もその後を追う。
「はい、どうぞ!」
「ありがとう!」
ボールを受け取った蒼が、そのままドリブルしていく。
体育館には、再びボールの音が響き始めた。
新しい部長。
新しい副部長。
そして、一年生たち。
三年生が引退したことで、バスケットボール部は新しい形へ変わり始めていた。
まだ慣れないことも多い。
それでも――。
「一年生、次はシュート練習!」
「はい!」
湊の声に、一年生たちが一斉に返事をする。
こむぎはその様子を見ながら、少しだけ笑った。
これから始まる新しい部活の日々。
そこには、まだ知らない出来事がたくさん待っていた。




