第118話 久しぶりの部活
夏大会が終わってから、少しの間。
バスケットボール部は、いつものように練習を続けていた。
しかし、夏休みの中には部活動の休止期間もあり、お盆の時期を挟んでしばらく体育館が使われない日が続いていた。
そして――。
「今日からまた部活だね!」
久しぶりに体育館へ向かいながら、桃華が嬉しそうに言う。
「うん。」
こむぎも頷く。
「なんか、ちょっと久しぶりな感じするね。」
「分かる!」
桃華が笑う。
二人が体育館の扉を開ける。
中では、すでに何人かの部員が集まっていた。
「お、来たか。」
湊が二人に声をかける。
「おはようございます!」
こむぎと桃華が元気よく挨拶する。
「おう。久しぶりだな。」
湊も笑顔で返す。
「はい!」
久しぶりの体育館。
聞き慣れたボールの音。
夏大会が終わってから少し時間が経ったこともあり、どこか新鮮な気持ちがする。
「一年生、こっちに集まって!」
瑠衣が声をかける。
「はい!」
一年生たちが集まっていく。
こむぎと桃華もマネージャーの仕事を始めた。
ボトルを並べたり、タオルを準備したり。
久しぶりの仕事だったが、こむぎは手際よく準備を進めていく。
「こむぎちゃん、久しぶり。」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、彩花が笑っていた。
「元気だった?」
「はい!」
「よかった。」
彩花は嬉しそうに頷く。
「夏休み、ちゃんと楽しんでる?」
「はい。いろいろありました!」
こむぎが笑う。
「そうなんだ。あとで聞かせてね。」
「はい!」
その時だった。
「こむぎさん!」
少し離れたところから声が聞こえた。
こむぎが振り返る。
「……あ。」
そこにいたのは真斗だった。
「真斗くん。久しぶり!」
「久しぶり、こむぎさん!」
真斗は明るく笑いながら近づいてくる。
「夏休み、長かったね!」
「うん。なんだか久しぶりに会った気がする。」
「俺も。久しぶりだね。」
真斗は嬉しそうに笑った。
「夏休みは何してたの?」
「友達と遊んだり、お祭りに行ったり……。」
「お祭り?」
「うん。楽しかったよ。」
こむぎが笑う。
「そっか! それならよかったね。」
真斗も笑った。
その様子を少し離れた場所から桃華が見ていた。
「……。」
桃華は小さく笑う。
すると、こむぎが何かを思い出したように口を開く。
「あの、真斗くん。」
「ん?」
「私のこと、もう『さん』付けしなくてもいいよ。」
「え?」
真斗が目を丸くする。
「同級生だし。」
「でも……いいの?」
「うん。」
こむぎが笑う。
「じゃあ……こむぎちゃん。」
真斗は少し照れたように笑った。
「うん。」
「なんか、ちょっと新鮮だね。」
「そう?」
「うん。」
真斗は嬉しそうに頷く。
「じゃあ、俺のこともタメ口でいいよ。」
「え?」
「こむぎちゃんも俺にはタメ口でいいよ。」
「……分かった。」
「うん。それでいこう!」
真斗は笑った。
「これからもっと話しやすくなりそうだね。」
「そうだね。」
こむぎも自然に笑う。
その様子を見ていた桃華が近づいてくる。
「なんか二人とも、前より仲良くなったね!」
「そうかな?」
こむぎが首を傾げる。
「うん!」
「まぁ、同級生だしね。」
真斗が笑う。
「桃華ちゃんも久しぶり!」
「うん! 真斗くんも元気そうだね!」
「元気だよ!」
三人が話していると、体育館の反対側から蒼の声が飛んできた。
「真斗ー! そろそろアップ始めるぞ!」
「あ、分かった!」
真斗が振り返る。
「じゃあ、また後でね!」
「うん!」
真斗は蒼たちのところへ戻っていった。
「……。」
こむぎはその背中を見送る。
「こむぎ。」
桃華が隣から声をかける。
「なに?」
「真斗くん、嬉しそうだったね。」
「うん。」
「こむぎちゃんって呼ばれるの、どう?」
「普通に嬉しいよ。」
こむぎはそう答えてから、少しだけ笑った。
「なんか、距離が近くなった感じするね。」
「でしょ?」
桃華も嬉しそうに笑う。
その頃、コートでは一年生たちがアップを始めていた。
「久しぶりの部活だね!」
蒼がボールをつきながら言う。
「休み長かったね。」
颯馬も笑う。
「俺、ちょっと体なまってるかも。」
「俺も。」
凜空が軽くストレッチをする。
「今日は無理しない方がいいかもね。」
悠真が静かに言う。
「そうだね。」
佐久も頷いた。
真斗はボールを持ちながら、ふとマネージャーたちの方を見る。
こむぎは桃華と話しながら、準備を続けている。
「……。」
「真斗?」
蒼が声をかける。
「ん?」
「どうした?」
「いや、別に。」
真斗は小さく笑った。
「久しぶりの部活、楽しみだね。」
「それならいいけど。」
蒼は笑いながら走っていく。
「早く来いよ!」
「分かってるって!」
真斗も後を追った。
久しぶりの体育館。
久しぶりの仲間たち。
夏大会が終わってから少し時間が経ったことで、みんなそれぞれ少しずつ変わっていた。
そして今日からまた、いつもの部活の日々が始まる。
夏休みは、まだ終わっていない。
これから先も、まだまだ時間は残っていた。




