第117話 祭りの終わり
四人は、最後に見つけた屋台へ向かって歩いていた。
「何の屋台かな?」
こむぎが少し前のめりになって覗き込む。
そこに並んでいたのは、色とりどりのお面だった。
狐のお面。
猫のお面。
うさぎのお面。
それ以外にも、動物をモチーフにした可愛らしいお面がたくさん並んでいる。
「わぁ……!」
こむぎの目が輝く。
「お面だ!」
「かわいい!」
桃華も嬉しそうに近づく。
「どれにしようかな〜。」
桃華は抱えている大きなぬいぐるみを少し持ち直しながら、並んだお面を見ていく。
「桃華、ぬいぐるみ抱えたまま選べる?」
こむぎが聞く。
「余裕!」
「ほんと?」
「ほら!」
桃華はぬいぐるみを抱えたまま、器用にお面を一つずつ見ていく。
「すごい……。」
こむぎが感心する。
「私はこれ!」
桃華が手に取ったのは、可愛らしい猫のお面だった。
「似合いそう!」
こむぎが笑う。
「でしょ?」
桃華は嬉しそうにお面を顔の横に当てる。
「こむぎは?」
「私?」
こむぎも並んだお面を見る。
しばらく悩んでから、一つのお面を手に取った。
「これにする!」
「お、いいじゃん。」
璃空が見る。
こむぎが選んだのは、少しだけ表情が可愛らしい狐のお面だった。
「かわいい!」
桃華が笑う。
「じゃあ私これ!」
「じゃあ俺はこれにするかな。」
璃空が一つ選ぶ。
「悠真は?」
こむぎが聞く。
「……これ。」
悠真が手に取ったのは、シンプルな黒いお面だった。
「悠真っぽい。」
こむぎが笑う。
「そう?」
「うん。」
四人はそれぞれ選んだお面を受け取った。
「せっかくだし、つけてみようよ!」
桃華が言う。
「今?」
「今!」
桃華はすぐに猫のお面をつける。
「どう?」
「かわいい!」
こむぎが笑う。
「じゃあ、こむぎも!」
「うん!」
こむぎも狐のお面をつける。
「どうかな?」
「似合ってる。」
悠真が答える。
「ほんと?」
「うん。」
こむぎは嬉しそうに笑った。
璃空も自分のお面をつける。
「……なんか変な感じだな。」
「ふふっ。」
桃華が笑う。
「似合ってるよ!」
「そうか?」
「うん!」
四人がお面をつけて並ぶ。
「……。」
こむぎが少し考える。
「なんか、別人になったみたい。」
「確かに。」
璃空が頷く。
「でも、これで歩いたら目立ちそうだな。」
「もう十分目立ってると思うけど。」
悠真が言う。
「それもそうか。」
璃空が笑う。
しばらく四人はお面をつけたまま、祭りの通りを歩いた。
けれど――。
「……暑い。」
こむぎがすぐにお面を外す。
「あはは!」
桃華が笑う。
「早い!」
「だって暑いんだもん!」
「じゃあ私も!」
桃華もお面を外す。
璃空と悠真も続いて外した。
「結局すぐ外したな。」
璃空が笑う。
「でも、楽しかった!」
こむぎが笑顔で言う。
「うん!」
桃華も頷く。
その時。
遠くから、祭りの終了を知らせる音が聞こえてきた。
「あ……。」
こむぎが振り返る。
屋台の明かりが、少しずつ消え始めていた。
「本当に終わっちゃうんだね。」
「そうだな。」
璃空が答える。
「帰るか。」
「うん。」
桃華は大きなぬいぐるみを抱え直す。
「この子、絶対大事にする!」
「名前つけるの?」
こむぎが聞く。
「もちろん!」
「もう考えてるんだ……。」
「帰りながら考える!」
「楽しそうだね。」
こむぎが笑う。
四人は屋台を後にする。
来た時よりも静かになった祭りの通り。
明かりは少しずつ消えていき、人の姿も減っている。
それでも、四人の手元には今日のお祭りの思い出が残っていた。
水色の浴衣。
ピンクの浴衣。
大きなぬいぐるみ。
そして、それぞれのお面。
「……楽しかったなぁ。」
こむぎが呟く。
「うん!」
桃華が答える。
「また来たいね!」
「来年もあるだろ。」
璃空が笑う。
「その時はもっといっぱい遊ぼう!」
「賛成!」
四人の笑い声が、静かになり始めた夜道に響く。
そして――。
四人は、寮へ向かって歩いていった。
長かった夏祭りの一日は、静かに終わりを迎えようとしていた。




