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第116話 最後の時間

「いらっしゃい!」


屋台のおじさんの声が響く。


「チョコバナナ、まだありますか?」


桃華が聞く。


「あるよ!」


「じゃあ一本!」


「桃華、ほんとに食べるんだ……。」


こむぎが呆れたように笑う。


「だって食べたいんだもん!」


「さっきも食べてたじゃん。」


「それはそれ!」


桃華はチョコバナナを受け取ると、嬉しそうに笑った。


「いただきます!」


「……おいしい?」


「おいしい!」


桃華は満足そうに頷く。


その横で、こむぎも笑う。


「桃華って、食べ物のことになると元気になるよね。」


「こむぎだってそうじゃん。」


「私は普通!」


「普通じゃないよ。」


璃空が笑う。


「さっきからずっと何か食べてるし。」


「……。」


こむぎは少し考える。


「……お祭りだから!」


「それ桃華と同じじゃん。」


「うっ……。」


こむぎが言葉に詰まる。


「ほら!」


桃華が笑う。


「仲間だね!」


「仲間じゃない!」


二人のやり取りに、璃空と悠真も笑った。


少し前までの緊張した空気は、もうなくなっていた。


「そういえば。」


璃空が桃華の抱えているぬいぐるみを見る。


「それ、ずっと持ってるけど大丈夫か?」


「大丈夫!」


桃華はぬいぐるみをぎゅっと抱える。


「むしろかわいいからずっと持ってたい!」


「結構大きいぞ。」


「平気平気!」


「前見えてる?」


こむぎが聞く。


「見えてるよ!」


桃華はぬいぐるみを少し持ち上げる。


「ほら!」


「本当だ。」


こむぎが笑う。


「でも、帰る時大変そう。」


「その時は頑張る!」


「根性でどうにかするんだ……。」


こむぎが苦笑する。


四人はそのまま歩き続ける。


屋台の明かりが、少しずつ消え始めていた。


「……もう終わっちゃうんだね。」


こむぎが少し寂しそうに呟く。


「そうだな。」


璃空が答える。


「でも、今日は楽しかっただろ?」


「うん!」


こむぎは笑った。


「すっごく楽しかった!」


桃華も頷く。


「私も!」


悠真は二人を見ながら、小さく笑う。


「じゃあ、最後にあそこ行こう。」


悠真が指差した先には、まだ明かりのついている小さな屋台があった。


「何の屋台?」


こむぎが首をかしげる。


「行ってみよう。」


四人は最後の屋台へ向かって歩き出す。


その途中。


こむぎはふと空を見上げた。


さっきまで花火が上がっていた夜空。


今は静かで、たくさんの星が見えている。


「……きれい。」


こむぎが小さく呟く。


「ん?」


桃華が振り返る。


「どうしたの?」


「ううん。」


こむぎは笑う。


「なんでもない。」


そして四人は、最後の屋台へ向かって歩いていった。


夏祭りの夜は、もうすぐ終わろうとしていた。

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