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第113話 最後の屋台

「最後に何か食べたいものある?」


璃空が聞く。


「うーん……。」


桃華は大きなぬいぐるみを抱えながら、屋台を見渡す。


「私は……。」


しばらく考えていた桃華が、突然指を差した。


「あれ!」


「ん?」


こむぎが振り向く。


そこには、焼きとうもろこしの屋台があった。


「焼きとうもろこし!」


「また食べるの!?」


こむぎが驚く。


「最後だから!」


「今日だけで何個食べてるの……。」


「お祭りだからいいの!」


「それ便利な言葉だなぁ。」


こむぎは呆れながらも笑う。


「じゃあ、一本ください!」


桃華が注文する。


「私は……。」


こむぎは少し考える。


「チョコバナナ!」


「まだ食べるんだ。」


璃空が笑う。


「だって見つけちゃったから。」


「なるほどな。」


二人がそれぞれ食べ物を受け取る。


桃華はぬいぐるみを脇に抱えながら、焼きとうもろこしを一口食べる。


「おいしい!」


「よかったね。」


こむぎもチョコバナナを一口食べる。


「……甘い!」


「こむぎ、顔にチョコついてる。」


悠真が言う。


「え?」


こむぎが慌てて口元を拭う。


「取れた?」


「まだ。」


「えっ、どこ?」


こむぎが焦る。


悠真が指を差す。


「そこ。」


「ここ?」


「もう少し右。」


「ここ?」


「うん。」


こむぎがもう一度拭う。


「取れた?」


「取れた。」


「よかった……。」


こむぎはほっとする。


その様子を見ていた桃華が笑う。


「こむぎ、子どもみたい。」


「桃華に言われたくない!」


「なんで!?」


「今日ずっと食べてるじゃん!」


「それとこれとは別!」


「同じだよ!」


二人の言い合いに、璃空が笑う。


「相変わらず仲いいな。」


「そう?」


桃華が首をかしげる。


「うん。」


こむぎも笑う。


そのまま四人は歩き続ける。


少しずつ、屋台の数が減っていく。


「……あれ?」


こむぎが周りを見る。


「なんか、人少なくなってきたね。」


「そろそろ祭りも終わりだからな。」


璃空が答える。


「そっか……。」


こむぎは少し寂しそうに呟く。


「楽しかったなぁ。」


「まだ終わってないよ。」


桃華が笑う。


「最後まで楽しもう!」


「うん!」


四人は再び歩き出す。


しかし、少し歩いたところで――。


「……あれ?」


こむぎが足を止めた。


「どうした?」


璃空が振り返る。


「ここ……さっき通ったっけ?」


目の前には、屋台の並ぶ通りから少し外れた細い道があった。


「んー……。」


桃華も辺りを見る。


「私、通った覚えないかも。」


「俺も。」


璃空が答える。


「じゃあ戻ろう。」


悠真が言う。


「うん。」


こむぎも頷く。


四人が引き返そうとした、その時。


「あ!」


少し先から、明かりが見えた。


「まだ屋台あるのかな?」


こむぎが言う。


「見てみる?」


桃華が尋ねる。


「うん!」


こむぎが先に歩き出す。


「おい、こむぎ。」


璃空が呼び止める。


「一人で行くなよ。」


「大丈夫!」


こむぎは振り返って笑う。


「すぐそこだから!」


そう言って、こむぎは少しだけ先へ進んだ。


桃華たちも後を追う。


けれど――。


角を曲がった先には、屋台はなかった。


「……あれ?」


こむぎが首をかしげる。


そこには、細い道がさらに続いているだけだった。


「こむぎ!」


桃華の声が聞こえる。


「そっちじゃないよ!」


「あ、ごめん!」


こむぎは慌てて振り返る。


「戻る!」


こむぎがみんなのところへ戻ろうとする。


しかし、祭りの音が遠くなった静かな道の中で――。


ほんの一瞬。


こむぎは、どこか懐かしいような感覚を覚えた。


「……。」


こむぎは足を止める。


けれど、その理由は自分でも分からなかった。


「こむぎ?」


また桃華の声。


「……うん!」


こむぎは笑って返事をする。


そして、みんなのところへ戻っていった。

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