第112話 りんご飴
祭りの通りへ戻った四人は、再びたくさんの屋台に囲まれていた。
「やっぱりこっちの方が落ち着くね。」
こむぎが周りを見ながら言う。
「人いっぱいだけどね。」
桃華は大きなぬいぐるみを抱えたまま笑う。
「でも、お祭りって感じする!」
「確かに。」
璃空が頷く。
「もう結構回ったけど、まだ時間あるな。」
「じゃあ、もうちょっと遊ぼうよ!」
桃華が言う。
「まだ遊ぶの?」
こむぎが笑う。
「もちろん!」
桃華は即答した。
「だってせっかくのお祭りだよ?」
「桃華、今日ずっとそれ言ってない?」
「いいじゃん!」
「まぁ、いいけど。」
こむぎは笑った。
四人は屋台を眺めながら歩いていく。
「……あ。」
こむぎが足を止める。
「どうした?」
璃空が聞く。
「りんご飴!」
屋台の前には、赤く艶やかなりんご飴が並んでいた。
「食べたい!」
こむぎが目を輝かせる。
「お、珍しい。」
桃華が笑う。
「こむぎから食べたいって言うの。」
「だっておいしそうなんだもん。」
「じゃあ買おう!」
桃華が言う。
「え、桃華も?」
「もちろん!」
「さっきたこ焼き食べたばっかりじゃん。」
「それはそれ!」
「別腹?」
「そう!」
「またそれ!?」
こむぎが笑う。
「じゃあ二つください!」
桃華が店員に注文する。
「私も食べたい!」
こむぎも続けて注文する。
「俺はいらないかな。」
璃空が言う。
「悠真は?」
「俺もいい。」
「じゃあ二人で食べよ!」
こむぎが嬉しそうにりんご飴を受け取る。
「いただきます!」
一口かじる。
「……!」
こむぎの目が輝く。
「おいしい!」
「でしょ?」
桃華もりんご飴を食べる。
「甘い!」
二人は並んでりんご飴を食べる。
その様子を見ながら、璃空が笑う。
「二人とも楽しそうだな。」
「うん!」
こむぎが答える。
「今日は楽しいこといっぱいだね。」
「だな。」
璃空も頷く。
その時、遠くから大きな音が響いた。
ドン――!
「わっ!」
こむぎが驚いて顔を上げる。
夜空に大きな花火が広がった。
「花火!」
桃華が声を上げる。
「また始まった!」
四人は足を止め、夜空を見上げる。
色とりどりの花火が次々と打ち上がっていく。
「きれい……。」
こむぎが小さく呟く。
隣にいた桃華も、ぬいぐるみを抱えたまま空を見上げている。
「すごいね。」
「うん。」
しばらく四人は何も言わずに花火を眺めていた。
ドン――。
また一つ、大きな花火が夜空に広がる。
こむぎはその光を見つめながら、自然と笑顔になった。
今日一日。
浴衣を着て。
みんなと歩いて。
屋台を回って。
笑って。
こんなに楽しい夏祭りは初めてだった。
「……来てよかった。」
こむぎがぽつりと言う。
「うん。」
桃華が笑う。
「私も!」
花火が終わる。
夜空に残った煙が、ゆっくりと消えていく。
「そろそろ終わりかな。」
璃空が言う。
「えー……。」
桃華が少し残念そうな顔をする。
「まだ帰りたくない。」
「でも、もう結構遅いよ。」
こむぎが言う。
「……そっか。」
桃華は少し寂しそうに頷いた。
「じゃあ、最後にもう一回だけ屋台見てから帰ろうよ。」
「いいね。」
璃空が頷く。
「賛成。」
悠真も答える。
四人は再び歩き出した。
祭りの明かりは少しずつ消え始めている。
人の数も、少しずつ減っていた。
それでもまだ、通りにはたくさんの人がいる。
「最後に何か食べたいものある?」
璃空が聞く。
「うーん……。」
桃華が考える。
こむぎも屋台を眺めながら歩く。
「私は……。」
その時。
少し先に、人の流れから外れる細い道が見えた。
こむぎは何となくそちらへ目を向ける。
「……。」
「こむぎ?」
桃華の声が聞こえる。
「ううん、なんでもない。」
こむぎは笑って、みんなのところへ戻る。
四人はそのまま、祭りの最後の時間を楽しむために歩いていった。




