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第111話 くじ引き

四人は、屋台の並ぶ通りから少し離れた細い道を歩いていた。


さっきまで聞こえていた祭囃子や人々の声も、少しずつ小さくなっている。


「……あれ?」


こむぎが周りを見渡す。


「なんか静かになったね。」


「だな。」


璃空も後ろを振り返る。


さっきまで見えていた屋台の明かりが、少し遠くなっていた。


「こっちで合ってるのかな?」


桃華が辺りを見回す。


「たぶん……。」


璃空が前を見る。


「でも、屋台があるって感じじゃないな。」


「戻る?」


悠真が言う。


「そうだね。」


こむぎも頷く。


四人が引き返そうとした、その時だった。


「あ。」


こむぎが足を止める。


「どうしたの?」


桃華が振り返る。


「あれ……。」


こむぎが指差した先には、小さな屋台が一つだけあった。


「まだ屋台あるよ!」


「ほんとだ!」


桃華の表情が明るくなる。


「行ってみようよ!」


桃華が先に歩き出す。


「ちょっと待って!」


こむぎも慌てて追いかける。


その屋台は、今まで見てきたものとは少し違っていた。


明るい照明もなく、簡素な机の上に小さな箱や景品が並べられている。


「何の屋台だろ?」


こむぎが覗き込む。


「くじ引きみたい。」


悠真が答える。


「くじ?」


桃華が興味津々に景品を見る。


「やってみたい!」


「また?」


こむぎが笑う。


「だって楽しそうじゃん!」


「桃華、今日めちゃくちゃ遊んでるよね。」


「夏祭りなんだからいいの!」


「それはそうだけど。」


こむぎも笑う。


「じゃあ、一回やってみる?」


「やる!」


桃華がすぐに答えた。


四人はそれぞれ一回ずつくじを引くことにした。


「まず私!」


桃華が箱に手を入れる。


「これ!」


引いた紙を店員に渡す。


店員が紙を確認する。


「……おめでとうございます。特賞です。」


「……え?」


桃華が固まる。


「特賞!?」


こむぎが思わず声を上げる。


「はい。こちらです。」


店員が取り出したのは、桃華が両腕で抱えられるくらいの大きなぬいぐるみだった。


「わぁぁ!」


桃華の顔が一気に明るくなる。


「かわいい!」


桃華は嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめる。


「すご……。」


こむぎが呆然とする。


「桃華、運良すぎない?」


「そうかな?」


桃華は首をかしげる。


「いや、特賞だよ!?」


「でも当たったよ?」


「そこじゃないって!」


こむぎがツッコむ。


「じゃあ次、こむぎ!」


「私?」


「うん!」


こむぎは箱に手を入れる。


「今回こそ……。」


「頑張って!」


桃華が大きなぬいぐるみを抱えながら応援する。


こむぎは少し迷ってから、一枚を引いた。


「これ!」


店員が紙を確認する。


「四等ですね。」


「おお!」


こむぎは小さな袋に入ったお菓子を受け取った。


「やった!」


「こむぎも当たったじゃん!」


桃華が笑う。


「うん!」


こむぎも嬉しそうに笑う。


「……でも。」


こむぎは桃華の抱えているぬいぐるみを見る。


「特賞と比べると差がすごいなぁ。」


「私は特賞!」


桃華が嬉しそうにぬいぐるみを見せる。


「はいはい。」


こむぎは苦笑する。


「でも、お菓子も嬉しいからいいもん。」


「こむぎ、こういう運勝負は弱いもんね。」


「なんで知ってるの!?」


こむぎが驚く。


「だって前にもくじとか全然当たってなかったじゃん。」


「そうだけど……。」


こむぎは少し考える。


「まぁ、運が悪いのは今に始まったことじゃないし。」


「開き直った。」


璃空が笑う。


「でも、こむぎは実力でどうにかするタイプだから。」


悠真が言う。


「そう!」


こむぎが頷く。


「運が悪くても、頑張ればなんとかなる!」


「なるほど。」


璃空が笑う。


「じゃあ次、俺。」


悠真が箱に手を入れる。


「……これ。」


店員が確認する。


「五等です。」


「なるほど。」


悠真は景品を受け取る。


「じゃあ俺も。」


璃空もくじを引く。


「……三等ですね。」


「お、結構いいじゃん。」


璃空が景品を受け取る。


「俺、桃華と交換する?」


璃空が桃華のぬいぐるみを見る。


「え?」


桃華が首をかしげる。


「それ持って歩くの大変そうだろ。」


「大丈夫!」


桃華はぬいぐるみをぎゅっと抱える。


「これ、絶対持って帰る!」


「そっか。」


璃空は笑った。


「じゃあ頑張って持って帰れよ。」


「うん!」


桃華は満足そうに頷く。


「じゃあ、そろそろ戻ろうか。」


悠真が言う。


「うん!」


四人は来た道を戻り始める。


桃華は大きなぬいぐるみを抱え、こむぎはお菓子の袋を持っている。


「桃華、前見えてる?」


「見えてるよ!」


「ほんと?」


「たぶん!」


「たぶんって……。」


こむぎが笑う。


しばらく歩くと、遠くから祭囃子が聞こえてきた。


「あ、戻ってきた!」


こむぎが嬉しそうに言う。


「よかった。」


桃華も安心したように笑う。


四人は明るい祭りの通りへ戻っていく。


たくさんの人。


たくさんの屋台。


色とりどりの明かり。


その中を歩きながら、こむぎはふと後ろを振り返った。


さっきまで歩いていた細い道。


そこには、誰もいなかった。


「……。」


「こむぎ?」


桃華の声で、こむぎは振り返る。


「どうしたの?」


「ううん、なんでもない!」


こむぎは笑って、桃華の隣へ戻った。


そして四人は、再び夏祭りの人混みの中へと消えていった。

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