第106話 待ち合わせ
夏祭り当日。
夕方。
空が少しずつオレンジ色に染まり始めていた。
こむぎと桃華は、寮の近くにある待ち合わせ場所へ向かっていた。
「楽しみだね!」
桃華が笑顔で言う。
「うん!」
こむぎも笑顔で答える。
今日はいつもと違う。
淡い水色の浴衣に身を包み、髪はお団子にまとめられている。
その上には、水色のかんざし。
普段とは違う自分の姿に、こむぎは少しだけそわそわしていた。
「なんか……落ち着かない。」
「大丈夫だって!」
桃華が笑う。
「すっごく似合ってるから!」
「そうかなぁ……。」
こむぎは少し照れながら、自分の浴衣を見る。
その時。
「おーい!」
遠くから声が聞こえた。
「ん?」
こむぎと桃華が振り向く。
そこには、こちらへ歩いてくる璃空と悠真の姿があった。
璃空は黒に近い色の浴衣。
悠真も落ち着いた色の浴衣を着ている。
「お待たせ!」
璃空が手を上げながら近づいてくる。
「悪い、待った?」
「ううん、今来たところ!」
桃華が答える。
「よし!」
璃空は笑顔で頷く。
「じゃあ行こうぜ!」
そのまま歩き出そうとした璃空だったが――。
ふと、こむぎの方を見る。
「……。」
一瞬だけ、足が止まった。
「?」
こむぎが首をかしげる。
「どうしたの?」
「あ、いや……。」
璃空は少しだけ目を逸らす。
そして、いつものように笑った。
「こむぎ、似合ってるじゃん!」
「本当?」
こむぎの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとう!」
「おう!」
璃空は笑いながら返す。
その横で、悠真もこむぎを見る。
「似合ってる。」
短い一言。
「ありがとう!」
こむぎは嬉しそうに笑った。
桃華も自分のピンク色の浴衣を軽く整える。
「私もどう?」
「お、いいじゃん!」
璃空がすぐに答える。
「桃華も似合ってる!」
「でしょ?」
桃華は満足そうに笑った。
「じゃあ、今度こそ行こう!」
四人は並んで歩き始める。
少しずつ暗くなっていく空。
遠くには、夏祭りの会場を照らす明かりが見え始めていた。
「わぁ……!」
こむぎが目を輝かせる。
まだ会場までは少し距離がある。
それでも、遠くから聞こえてくる祭囃子の音に胸が高鳴った。
「なんか、ワクワクしてきた!」
「俺も!」
璃空が笑う。
「今日はいっぱい楽しもうぜ!」
「うん!」
四人の声が、夕暮れの道に響く。
そして――。
四人は、夏祭りの会場へ向かって歩いていった。




