第10話 偶然のペア
「それじゃあ最初のメニューを始めるぞ!」
先生の声がグラウンドに響く。
「まずは歩く練習だ。いきなり走ると転ぶからな。足を結んだら、息を合わせて歩いてみろ。」
「はーい!」
生徒たちはそれぞれのペアで集まり始めた。
「じゃあ、結ぼっか。」
凜空がそう言ってしゃがみ込む。
「う、うん。」
こむぎも隣にしゃがみ、先生から渡されたバンドで二人の足を結んだ。
「これくらいで大丈夫?」
「うん、ちょうどいいと思う!」
二人はゆっくり立ち上がる。
「じゃあ、歩いてみよう。」
「うん!」
凜空が小さく息を吸う。
「せーの。」
一歩踏み出した瞬間――
「わっ!」
二人の足がもつれ、こむぎが大きく体勢を崩した。
「危ない!」
とっさに凜空がこむぎの腕を支える。
転ぶ寸前でなんとか踏みとどまり、こむぎはほっと息をついた。
「ご、ごめん!」
「大丈夫?」
「うん……ありがとう。」
凜空は優しく笑った。
「最初はみんなこんな感じだから。」
その笑顔につられて、こむぎも少し笑う。
「じゃあ今度は声を合わせてみようか。」
「声を?」
「うん。『いち、に』って言いながら歩くと合わせやすいよ。」
「なるほど!」
二人は顔を見合わせる。
「せーの。」
「「いち、に。いち、に。」」
今度はさっきよりもずっとスムーズだった。
「おっ、いい感じ!」
「本当だ!」
少しずつ息が合い始め、歩幅も自然とそろっていく。
「こむぎー!」
聞き慣れた声に振り向くと、少し離れた場所で桃華が大きく手を振っていた。
「頑張れー!」
「桃華ー!」
こむぎも笑顔で手を振り返す。
「その調子だぞー!」
先生が手を叩く。
「歩けるようになったペアから、軽く走ってみろ!」
「よし。」
凜空はこむぎの方を向いてにっこり笑う。
「次は少しだけ速くいってみよう。」
「うん!」
二人はスタートラインに並ぶ。
周りでは、ほかのペアも少しずつ走り始めていた。
「準備はいい?」
「うん!」
「それじゃあ――」
「「せーの!」」
息を合わせて、一歩目を踏み出した。




