第97話 サフィアル
居間に全員が収まると、ルーシェが壁に張った地図の一点を指先で叩いた。
「ドルクさんの五十支店の流通網と、ガーレンさんの諜報を統合しました。結社の軍事補給拠点。ここです」
(五十支店。私が寝込んでる間に、そんなに増えたの)
地図の南方、サフィアル交易連合の海岸線。港町ハイレドン。
「武器、薬草、古代術式の触媒。教皇国本体の作戦準備物資が集約されています。線分の最適配分術で計算したところ、ここを潰せば、教皇国本体の軍事力が四割削れます」
カイルの眉が動いて、「四割」と短く繰り返した。
シャルロットが図表を覗き込んだ。
「補給拠点から叩くのは妥当ね。ここを潰せば、聖都への道も開くわ」
ガーレンが地図の余白に指を置いた。
「諜報の報告と一致します。警備は本体ほどじゃない」
ルーシェが指で地図の余白を二度叩いた。
「ただ、内部に古代術式の使い手が複数。マヌエル直属の刺客が配されている可能性も」
ドルクがパイプを口の端で噛み直した。
「気をつけろ、お嬢ちゃん。お前さんがいねえと、店も世界も回らねえ」
「行く。拠点を叩く」
会議の声が落ち着いた。
シャルロットが紅茶のカップを傾けながら、ふと口を開いた。
「そういえば私、近いうちにサフィアルに用事があるのよ。スイオン島まで」
「サフィアル?」
「他流試合よ。仕事と思って」
ミナが目を細めた。
「シャロ姐さん、最近よくサフィアルの話するわよね?」
シャルロットの頬が一瞬赤くなった。すぐに視線が紅茶のカップに落ちた。
「勘違いよ」
ガーレンが地図を畳んだ。
「行軍は二日後の朝。今夜と明日で物資を揃える」
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