第71話 「血はつながってなくても、姉妹でしょ」
全員が椅子を引き始めた時、私はシャルロットの肘に触れた。
「シャルロット」
「あら」
シャルロットが振り返った。
蝋燭の光が、剥がした塗料の下の素顔を照らしている。
「王城の中庭で、あの老人と話していたでしょう」
シャルロットの目が一度だけ細くなった。それから、ゆっくり口の端が持ち上がった。
「見てたの。いい目してるわね」
「あの人、誰ですか」
「祖父の代の家臣よ。王城内の脱出経路を確認していたの。あんたたちが侍従長の部屋に入った後、近衛が動く前に外へ抜けられるように」
胸の奥で、冷たいものが溶けた。
前世の記憶が薄れていく。信じた相手に刺された夜の、あの感触が。
「ごめんなさい」
「何が」
「疑った」
シャルロットの瞳が、蝋燭の炎を映して揺れた。怒りはなかった。
呆れもなかった。ただ、真っ直ぐにこちらを見ていた。
「あら、いい子じゃない」
声が柔らかかった。
シャルロットの手が伸びて、私の頭を、くしゃりと撫でた。
「妹分に疑われるくらい、どうってことないわ。それに、私だって、あんたを最初に見た時、ちょっと疑ったもの。普通の侯爵令嬢にしては、目が、時々ね、すごく遠くを見てる」
「遠く?」
「自分で気付いてないの?」
返す言葉が出なかった。
シャルロットが肩をすくめた。
「血はつながってなくても、姉妹でしょ。疑って、確かめて、笑えたら本物よ」
二人で、笑った。
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