表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/30

第28話 一番目

 自室で、ノクスと向き合った。窓から朝陽が差し込んで、黒い毛並みに金色の光が混じっている。ノクスは窓枠の上に座って、尾の先だけをゆっくり揺らしていた。


 昨夜のカイルの話が、頭の中で繰り返されていた。


 カイルの兄。赤い目。


 王家の術師が総力で解呪を試みて、解けなかった。



「ノクス。あの呪い、古代のものだと思う」


「根拠は」


「王家が集めた最高の術師たちでも解けなかった。現世魔法の体系の外にある術式だよ」



 ノクスの尾が、一度だけ止まった。



「私が古代の術式を使えるなら、同じように使える転生者が、他にもいるかもしれない」



「飛躍しすぎだ」



 ノクスの声は冷たかった。



「使徒は神に仕える者だ。王家を内側から食い荒らす動機がない。禁書庫に眠った術式を掘り起こした人間かもしれん。決めつけるのは早い」


「そうかもしれない」



 でも、胸の奥で引っかかるものがあった。


 転生前の記憶の、どこかで、似たものを見た気がする。


 思い出せない。輪郭だけがちらついて、掴めなかった。それが不安だった。



「一番目に会いに行く」


「一番目?」


「最古の転生者なら、古代魔法のことを一番知っているはず。使徒が関わっているかどうかも、見当がつくかもしれない」



 昨夜、古い記録を辿って一つの名前に行き着いていた。



「アロウィン・ヴェスタル。現世魔法体系の創始者。今は王立魔法学院の学院長として健在のはず」



 ノクスの目が細くなった。金色の虹彩の中で、瞳孔がわずかに絞られた。



「お前が自分から踏み込むのは、珍しいな」


「踏み込まないと、ずっと後手だから。それに、カイルの呪いのことも、聞いてみたい」



 ノクスの尾が止まった。しばらくして、もう一度揺れ始めた。



「好きにしろ」



 肯定の口癖だった。そう言うと、ノクスは窓枠の上で後ろ足を頭の横に持ち上げて、耳の裏をかきはじめた。話は終わった、という合図だった。


 こういう時のこの子は、本気でただの猫にしか見えない。

お読みいただき、ありがとうございました。

この物語を見届けたいと思ってくださったら、ブックマークと★で、そっと背を押していただけると嬉しいです。毎日更新しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ