第200話 式次第
夕方、渡り廊下でシャルロットに捕まった。
「ちょうどよかった。明日の式次第なんだけど、あんたの立ち位置は最前列の右端ね。礼服も使節の手配も終わってる。教皇国からも来たわ。形だけの祝意ね。断れば国際問題になるから」
シャルロットの手に分厚い書類の束があった。付箋が何枚も飛び出していて、指先にインクの跡が残っている。目の下に薄い隈があった。
「右端?」
「カイルが通路を歩いて祭壇に立って、振り返った時に最初に目に入る場所よ」
言葉が詰まった。
シャルロットの目が真っ直ぐこちらを見ている。何かを見透かすような、でも咎めるつもりのない目だった。
「わざと、そこに?」
「席配置は宰相の権限よ。文句ある?」
「ありがとう、シャロ。全部」
「当然よ。宰相の仕事じゃない。姉の仕事よ」
それだけ言って、また歩き出した。渡り廊下の角を曲がる直前に、肩越しに振り返った。
「あと、綺麗な格好しなさいよ。カイルの晴れの舞台よ。あんた普段地味だから。いつもの外套で来たら承知しないわよ」
シャルロットの背中が角の向こうに消えた。
書類の束から付箋が一枚はがれて、廊下の床に落ちた。
拾い上げると、シャルロットの筆跡で「冠の磨き直し・完了」と書かれていた。
走って追いかけて、付箋を返した。シャルロットが受け取って、何も言わずに書類の間に挟み直した。
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