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第20話 七歳の冬

 祭壇の中央に刻印があった。石板の表面に浅く刻まれた円環。光が消えた今は模様にしか見えない。


 でも、触れれば分かる。


 この下に何が眠っているか。


 指先を刻印に触れさせた。頭の奥で、声が響いた。



 ――あなたは第九番。



 七歳の冬の声だった。平板な声。だが冷酷ではない。


 何かを確認するような、記録するような響き。


 指先が石板から離れなかった。体の芯が凍りついて、呼吸が喉の手前で止まった。


 あの冬の朝と同じ。世界が自分だけを名指しする感覚。


 知っている。この声を知っている。私が何であるかを告げた、あの声だ。



「どうした」



 カイルの声で我に返った。



「何でもない」


「顔色が悪い」


「大丈夫です」



 指先を石板から引き剥がした。冷たかった。



「ノクスが、魔法を使うと魔力を持っていかれて。だから、たまに、ふらつくんです」



 カイルが私を見て、刻印を見た。視線が円環を一度なぞって、戻ってきた。



「少し休め」



 それだけ言って、背を向けた。

お読みいただき、ありがとうございました。

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