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第17話 影狼

 地鳴りが足裏を叩いた。儀式の間の奥壁が割れた。石片が飛んで、紋様の光が消えた。


 暗闇の中から音がした。石畳を引っ掻く爪の音。


 一つではない。二つ、三つ、四つ。五つ目が遅れて加わった。


 等間隔ではない。五本目だけが他の四本とずれている。生物の脚ではありえない配置だった。


 白い骨の鎧が闇の奥から浮かんだ。肋骨を外側に裏返したような形状で、表面に細かい亀裂が走り、亀裂の奥が赤黒く脈動している。


 その鎧の内側には実体がなかった。影そのもので構成された胴体が、骨の隙間から煙のように揺らいでいる。


 頭部の位置で、赤い光が二つ灯った。目だった。


 影狼。



 ――これを知っている。



 私の同期の魔法使いが研究していた禁呪。生物を影で再構成する実験。倫理に反すると判断して、塔の地下に封印した。


 あれを掘り出した者がいる。



「カイル!」



 カイルが剣を抜いた。先制の突進。速かった。だが影狼の骨鎧に剣が弾かれて、火花が散った。


 影狼の前足が薙ぎ、カイルが横に跳んで壁に背をつけて体勢を立て直す。



「硬い、外殻じゃない。骨だ」



 トールが前に出て大盾を構えた。膝を落として、体重を盾の裏に預けた。


 影狼の前足が振り下ろされ、トールが大盾で受けた。轟音が儀式の間を揺らした。


 盾の表面に薄く魔力の膜が張った。あの少年が使えるのは、それだけだ。


 盾に流し込む防御の一種だけ。攻撃も回復も持たない、Fランクの防御魔法師。


 膜が一瞬で剥がれた。トールの体が宙に浮いた。


 地面から離れて後ろへ吹き飛び、盾を抱えたまま儀式の間の奥の壁まで、二十歩以上の距離を一瞬で吹き飛ばされた。


 背中が壁に叩きつけられ、石が砕けて煙が舞った。



「トール!」



 声が出たが、届かなかった。トールは壁の根本に崩れて動かない。



 煙の奥で、盾の影だけは手から離れていない。

お読みいただき、ありがとうございました。

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