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第16話 儀式

 儀式の間は暗く、松明を掲げても天井まで光が届かなかった。壁面に幾何文様が刻まれていて、微かに赤い光を放っている。


 中央に五つの物が置かれていた。女のスカーフが二枚。薬草籠。きこりのブーツ。布で包まれた何か。


 これら五つが正五角形の頂点に配置されている。幾何文様の中心点を囲むように。



 供物の配置だ。



 この配列を、どこかで見た気がする。古い記憶の縁が震えた。



 嫌な気配だ。



 壁際に人が倒れていた。女だった。薬草採りの格好。髪が乱れて顔に張りついている。


 左腕が、肩の付け根からなかった。



 胸が浅く動いている。

 まだ生きている。



 駆け寄って膝をつき、女の頭をそっと持ち上げた。瞳孔が開いていた。焦点が合わない。


 唇が動いた。



「ミレ、ナ」



 声が消えた。胸の動きが止まった。


 治癒の術式を口にした。聞き取れないほどの小ささで。


 光が女の体を包んだ。



 遅い。



 心臓がもう動いていなかった。



 光が包んでも、温かさは戻らなかった。手を下ろした。



「ミレナ、って言ってたっすね」



 トールが立ったまま、中央のスカーフの一枚を見ていた。顔色が変わっていた。



「このスカーフ、うちの店に来てた人のだ。刺繍が。うちの母ちゃんが縫った花の柄だ」



 トールが唇を噛んだ。



 拳の関節が白くなった。



 カイルが紋様の中心を見下ろしていた。



「これは。儀式の配置のようだな」


「かもしれません」



「昨日の甲虫と同じだ。四重円の紋様。同じ手の連中が」



 カイルの声が途切れた。



 壁面の赤い光が脈動した。

お読みいただき、ありがとうございました。

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