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第136話 「星が近い」

 修行最終夜、焚き火を挟んで二人が座っていた。


 山の空は晴れていた。星が近い。


 街では見えない星の数が、手が届きそうな距離で瞬いている。カイルが干し肉を千切って口に放り込んだ。


 噛みながら、火を見ている。



「お前と組めば、焔渦の溜め時間を盾で稼げる。盾撃を撃った後の隙を、焔穿で潰せる。二人とも守れる」


「うすっ」



「俺、お前を相棒と呼ぶ」



 トールの手が止まった。干し肉を持ったまま口が開いて、焚き火の光が呆けた顔を照らしていた。



「相棒、っすか」



「ああ」



 トールの喉が鳴った。飲み込んで、吐き出して、もう一度飲み込んだ。



「光栄っす」



 低くて、短くて、それ以上の言葉が出てこなかった。目元が赤い。


 焔の光だけではなかった。


 焚き火が爆ぜた。



「おいお前ら、まだ寝てねえのか」



 庵の奥から、ヴァロアの声が飛んできた。


 怒鳴るほどの声量ではなかったが、山の夜に響いた。二人が同時に苦笑して顔を見合わせ、干し肉を飲み込んで立ち上がった。


 焚き火の最後の薪が崩れた。芯の赤が細くなって、灰が風に舞った。


 二人の影が、崩れかけた焔に照らされて、一つに伸びていた。


 岩壁の端まで長く細く。やがて焔が消えて、影も溶けた。



 星だけが残った。


お読みいただき、ありがとうございました。

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