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第135話 ミナさんへ

 その夜、トールは鍛冶仕事の道具を広げていた。庵の囲炉裏の火を借りて、小さな鉄の板を叩いている。鎚の音が規則的に響くのを聞きながら、カイルが横目で手元を見ていた。



「何を打ってる」


「ミナさんへの、お土産っす」



 手元を覗き込んだ。鉄板の端が丸く曲げられている。髪留めの形だった。


 鍛冶屋の手で打った荒い仕上げだが、曲線だけは丁寧だった。縁に小さな葉の模様を一つ、鏨で刻んでいる。



「次に会った時に、渡すっす」



 トールの耳が赤い。手元だけを見て、顔を上げない。



「俺も、何か用意するかな」


「リーラさんに?」



 囲炉裏の焔を見たまま頷いた。



「まだ、何も渡してない」



 トールの鎚が止まった。カイルの横顔を見た。



「カイルさん、リーラさん、きっと、何もらっても嬉しいっすよ。カイルさんからなら」


「そうか」


「うすっ。俺が保証するっす」


「お前の保証は心許ないが、参考にする」


「ひどいっす」



 鎚の音が再開した。規則的に、丁寧に。囲炉裏の火が、二人の手元を照らしていた。


お読みいただき、ありがとうございました。

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