表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/236

第134話 「腹から声を出せ」

 二週間が経った頃から、トールの修行が本格化した。


 岩壁の前で盾を構え、シールドの呪文を唱えながら足を踏み込んだ。鍛冶場で鎚を振り下ろす感覚。足裏から腰を通って、盾の縁に力を集中させた。


 盾の縁が青白く光った。衝撃が前方に走った。


 岩壁に拳大の穴が空いたが、体が後ろによろめいて膝が笑った。



「届いてる。だが体が保たん。一発で膝が折れてたら意味がない」



 ヴァロアが杖で岩壁の穴を指した。



「技はいい。だが後方支援が前提だ。お前一人じゃ、撃ったあとに隙ができる」


「分かってるっす。俺には」



 トールが振り返った。庵の裏で焔を回しているカイルの背中を見た。



「俺には、カイルさんがいるっす」



 ヴァロアの目が細くなった。何かを思い出すような、遠い目だった。



「カイル、か。よし。もう十回」



「うすっ!」



 二十日目の夕方、トールの盾の縁から衝撃波が走った。五歩先の岩が砕けて飛んだ。


 トールの膝は折れなかった。足裏が岩に食い込んで、重心が前に残っている。


 ヴァロアが一度だけ、杖を地面に突いた。



「いい。名前をつけろ」



 トールが盾を見た。木の芯に鉄板を張った、使い古した大盾。裏側に妹の名前が彫ってある。



「盾撃っす」



「そのまんまだな」


「うすっ。そのまんまが好きっす」



 ヴァロアが笑った。笑い声が岩壁に響いて、二度、三度、山に吸い込まれていった。


お読みいただき、ありがとうございました。

この物語を見届けたいと思ってくださったら、ブックマークと★で、そっと背を押していただけると嬉しいです。毎日更新しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ