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第123話 「こういう知識、どこで」

 部屋に戻ると、ノクスが布団の上で丸くなっていた。浴衣のまま布団に入った。


 髪がまだ少し湿っていて、枕が冷たかった。



「ノクス」



「何だ」



「なんでこの湯、毒抜きの仕上げに効くの」



 ノクスの耳が一度動いた。


 毛繕いを始めた。前足で顔を拭いて、次に耳の裏。ゆっくりとした動作だった。



「硫黄と古い地脈の魔素。湯治場の主が古代医学を継いでる」


「ノクス、こういう知識、どこで」


「長く生きてれば、いろいろ覚える」



「また、はぐらかした」



「はぐらかしてない。事実だ」



 ノクスの尾が一度だけ揺れた。



 それ以上は何も言わなかった。



 布団の中で目を閉じ、左手を握ってみた。力が入る。昨日より少しだけ、強く。


 一週間の養生で、トールも歩けるようになった。左腕の筋も、僅かだが戻りつつある。カイルの肋骨の傷も、ヴィオラの治癒術と硫黄泉のおかげで塞がりきって、もう包帯も外れていた。



 明日、ヴィルヌアに戻る。


お読みいただき、ありがとうございました。

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