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第102話 「あの女を調べろ」

 マルセオの宿に戻って、カイルが短く言った。



「ガーレン、あの女を調べてくれ。一日で調べられるだけで大丈夫だ」



 ガーレンが一つ頷いて、部屋を出た。足音が廊下の向こうに消えるまで、三秒もかからなかった。


 その夜、トールが宿の食堂で興奮気味に語っていた。



「リーラさんの前でまた赤髪の幽霊が消えたんすよ!」



 隣の席の客が振り返った。



「赤髪の女幽霊って、街道の伝説のあれか?」



 別のテーブルから男が身を乗り出した。



「俺も街の外で見たぞ。フードかぶった女が、足音もなく消えた」



 トールの目が輝いた。



「絶対あれっす! 幽霊っす! 神官のフードかぶってたっす!」



 ミナが腕を組んで、小さく頷いた。



「あたしも見たのよね、実は。足音しなかったもん」



 ガーレンがカイルの横で、小声だけを落とした。



「これで彼女、明日には街中の噂になりますね」



 カイルが杯を傾けたまま、小さく息を吐いた。



「トールを止めるのはもう無理だな」



 赤髪の女幽霊の伝説が、トールの声量で一段大きくなっていくのを聞きながら、セージの束の匂いがまだ指先に残っていることに気がついた。


お読みいただき、ありがとうございました。

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