精錬の余熱
神殿への帰り道、暴れ狂っていた砂煙は嘘のように引いていった。
視界が開けた砂漠のただなかに、彼女はいた。半分ほど砂に埋もれ、物言わぬ肉塊と化した立花の遺体を、高瀬が見つけた。
高瀬は何も言わず、膝をついて砂をかき寄せ始めた。
「……埋めてあげたいんです。せめて、あんな化け物にこれ以上、弄ばれないように」
緒方はその背中を黙って見つめた。どうせ次に嵐が吹けば、この場所が墓だったことすら分からなくなる。それでも、高瀬が泥臭く砂を掘る姿は、この異界で唯一「人間」の尊厳を繋ぎ止めているように見えた。
「手伝うよ」
緒方も隣に膝をつき、砂を盛り始めた。
「……高瀬。さっきの写真は、お前が持っておけ。……俺は決めたんだ。何があっても、例えあの榊や、あの紅い化け物と刺し違えてでも、お前だけは元の世界に帰してやる」
高瀬の手が止まる。緒方の目は、かつて事件資料を追っていた時よりもずっと鋭く、それでいて慈愛に満ちた熱を帯びていた。
「緒方さん……」
「いいから聞け。あいつらは人を『魂』や『不純物』としか見ていない。だが俺は刑事だ。目の前の生きてる人間を、システムなんかに食わせるわけにはいかねえんだよ」
小さな砂の盛り土が完成する。それが立花という女性が生きた、最後の証となった。
二人は祈りを捧げる間もなく立ち上がり、不気味な静寂に包まれた神殿へと戻った。だが、中に入った二人は、そこにあるはずの「解読の熱気」が消え失せていることに気づく。
「……何だ、この静けさは」
奥へ進んだ緒方が絶句した。
そこには、冷たい石床に横たわり、ぴくりとも動かない佐藤の姿があった。




