2話「自宅に出来た地下ダンジョン」
アラームの音が聞こえて俺は目が覚めた。スマホを手に取り時刻を確認すると、11時30分。
9時に起きようとアラームかけていたのだが、思ってた以上に疲れが溜まってたのか予定よりも遅く起きてしまったようだ。
顔を洗い……そういえばトースターでパンを焼いていたような。思い出したように確認してみると、やっぱり焼いていた。焼けているが、もう冷たい。
一度トースターだかで温度を上げておき、その後に数十秒だけパンを焼いてみることにした。
その後、色々と支度を済ませた俺は、再びトイレから地下へと向かうことにした。
【地下ダンジョンについての説明を開始しますか?】
改めて思うけど、本当に現実なんだよな。うん、やっぱり痛いわ。
頬をつねったが痛かった。
【Yes】を選択し、説明を開始してもらうことにした。誰が説明するのかなと思っていると、目の前に映っていた文字が切り替わるようだ。
【ここは木下様の自宅地下に出来たダンジョンとなっております。存在する階層は無限にあり、1階層から始まります。ダンジョン内部にはモンスターと呼ばれている生物が存在しており、それらを倒すことで、倒されたモンスターは自動で魔石や素材に変化しそれらが手に入ります。魔石は主にこちらの窓口で買取をし、日本円に換金。素材は主に武器や防具を作るためのものになりますので一定数の数を集めるとシステムにより作成可能となります。その他で質問はございますでしょうか?】
「ちょっと待ったくれ。情報量が多いぞ」
一旦落ち着いて、俺は昨日寝る直前に考えていたことを思い出す。
クリスマスプレゼントで「ダンジョン」をと願ったのは願ったのだが、目の前にあるのは正真正銘ダンジョンらしい。
ただ文字が書いてあるだけで、周り建物は俺の家の素材となんら変わらない。
奥の方に一つのドアがあるものの、そのドアだけ作りが金属のように出来ていると言ったところだろう。
仮にここが地下ダンジョンだと理解して、下に伸びていることになるのだが、この下は物理的に考えて大丈夫なのだろうか?
法律とか色々あるし、ずっと続いてるとなると日本の反対側に地下ダンジョンが突き刺さってるということにもなる。
「えっと、地下ダンジョンってことだけど、法律的には大丈夫なのかな」
【大丈夫です。仮想空間的なものだと思ってください。見えてるのは木下様のみです】
なるほど。わからんが、大丈夫と言われれば信じる他はないだろう。
【他にはございますか?】
この文字、忙しないな。もう少し理解する時間をくれてもいいじゃないか。
しかし俺も考えるよりも、実際に体験した方が理解出来るのではと思った。だからこの文字も急かして来るんじゃないのかと。
「とりあえず地下ダンジョンに潜ってみようかな」
【それではこちらをお持ちください】
その文字と同時に目の前に現れたのは一つの皮袋。
なんだこれ?!
まさに非日常。クリスマスプレゼントに、と願ったはいいものの実際にそれを体験することになるとは思ってもみなかったし、本当に現実感がなさすぎる。
皮袋を手に取り中身を出してみると、ビー玉サイズのビー玉のようなものが3つ出てきた。
【それは【回復宝珠】と言い、受けたダメージを回復するものになります。回復薬ですね】
なるほど。すごく分かりやすい。ラノベ読んでて良かったと思った瞬間だった。
【それではまずは1階層からとなります。あのドアを開けて進むと1階層です】
その文字に従うようにして俺は歩き始める。ドアに手をかけ開けようとすると凄く重く感じだが、どうにかして開けることが出来た。
金属で出来ていると思っていたが、ドアの分厚さが思っていた数十倍分厚すぎた。だから重過ぎたのだろう。
にしても、この文字ずっと着いて来るんだ。
最初ここに降りて来た時に現れた文字なんだが、今は俺の真横に浮いている。浮きながら、1階層の中に入って来てますからね。
◇
ドアを潜り抜けた俺がやって来たのは地下ダンジョンの1階層。今の俺の視界にはゲームのようなシステム的なものが見えている状態だ。
どうしてこうなってるかは分からないが、とりあえずこういうものなんだと一旦受け入れる。疲れたし。
視界の右下には1階層の地図らしきものが映っているので、それ頼りに歩いているのだが、赤い点みたいなものが見えてきた。
ゲームやラノベで言えばこれは敵のマークなんだと思う為、結構距離が近づいた後に俺はゆっくりと近づくことにしてみる。
敵らしき存在がいるのは俺が今立っている場所の少し奥の方だが、壁がある為そこから恐る恐る顔を覗かせて確認することに。
「あれってスライムかな」
青くプルンッと揺れるように地面を歩いているその存在ーースライムが1体居た。
スライムと言えばゲーム等では序盤の敵で一番倒しやすいと思われているモンスターのはずだ。
多分、俺でも倒せるはず!
しばらくした後俺は意を決してスライムに向かって走り出す。と同時に俺は皮袋しか持っていないことにも気が付く。うん、スライムを倒す為の道具とかを持ってないのにどうやってスライムを倒すのだろうか。素手で殴るの?
無理だ!となった俺は、スライムと戦うために役立ちそうなものを探しに地下ダンジョンから脱出することになった。
◇
地下ダンジョンから地上に戻り、スライムと戦うのに役立ちそうなものを探すこと数十分を使った。
改めて地下ダンジョンへ戻って来る。
うん、家には役立ちそうなものがなかったのだ。当たり前だろうが、ファンタジー風に言う武器はそもそも家にあるわけじゃない。
包丁やらなら何本かあるし、ほとんど使っていないから使えるが……と思ったのもあるが、悩んだ末に持ってかなったか。
物置倉庫も一応探してみて、ちょうど良さそうな鉄棒を見つけたのでそれを持って来た。長さ的にドアに入らないのではと思ったが、皮袋の中に入ったので驚いている。
よし、それではスライムとの戦いを始めよう。
先ほどの場所にはスライムが居なかったので、地図頼りにあらゆる場所を探し回った。
1つ分かったことがあるが、地図はマッピングみたいな感じで歩いた場所には色が付く仕様だった。逆に歩いていない場所は黒く塗られているようだ。
「お、敵マークだ」
多分スライムだろうが、スライム以外にも出てくる可能性は捨てきれない。ほら、ゴブリンとかもファンタジーラノベじゃ定番だろう。
とりあえず、ゴブリンだった場合は走って逃げようと思う。
持ってきた鉄棒を構えながら恐る恐る近づき、距離が縮まる。
よし、スライムだ!
心の中で喜びながら、ゆっくりとスライムとの距離を縮める。
スライムの方は俺の存在に気がついておらずその場で揺れているだけ。プルプルしててゼリーのようだが、おそらく味は不味そうだ。
ある程度の距離になり、俺は鉄棒を振り下げる。
スライムと接触した鉄棒の先っぽは、スライムの弾力に負けたのか、スライムを潰すことなくプルンと揺れている。その揺れが俺の手にも伝わってくる。プリンじゃん!と心の中で叫ぶが、攻撃れたことに気が付いたスライムもまた俺に飛びかかって来た。
バイトで鍛えたであろう反射神経を生かしてスライムの攻撃をどうにか避けた俺は、合わせて鉄棒での攻撃を試みる。またもやスライムの弾力で押し返されるも、何度も何度も鉄棒で叩きまくる。
何十回目かの叩きでようやく決着が着いたのか、スライムは淡い光を出しながら消滅する。
そしてその場には小指の爪サイズの石のようなものが転がっていた。




