1話「非日常を夢見て」
12月25日。今日は年に一度のクリスマスだ。と言っても、クリスマスイブである12月24日だけど。
今年で17歳になるけど、クリスマスプレゼントを一度ももらったことがない。
理由は、俺が産まれた時に母が他界し、父は元から居なかったからだ。父方母方の両親や親戚と連絡が取れなかったことで、産まれてすぐに児童養護施設へと入ることになってしまったわけ。
それから16年の月日が経ち、高校生になった俺は半年後に施設を出ることになり、母が住んでいたであろう掃除も出来ていない家に住み始めた。
掃除は良くしてもらった施設の人達が手伝ってくれ、業者の方へのお金の支払いもしてもらっている。その為社会人になったらお金を返すことになっているのだ。
母の家に住むに当たり、俺はそこから近い高校を選んだ。
また家に住むにはお金がかから。その為、ほぼ毎日バイトをして稼ぐという生活を送っているわけだ。
そして今日もまたバイトが終わり家に帰り、やることもないので布団の中に入っている。
毎日こんな生活を続けて飽きずにって思うかも知らないが、すでに飽きている。
逆に疲れが溜まり過ぎて取れず、高校の授業に支障が出そうなくらい。
授業を取ることになると、家を手放して国の生活支援を受けることになるが、母の大切な場所を失うわけにはいかないのだ。
顔も声も何もかも知らない母だけど、それでも俺を産んでくれた数少ない家族。
スマホを見ると時刻は22時。寝るには少々早すぎるのだが、明日もバイトを2つ控えている身なので、早めに寝て英気を養う必要がある。
「クリスマスプレゼント、か」
今日クラスメイトが話しているのを耳にした話を思い出してしまう。
一度ももらったことのないそれがたまらなく欲しくてしょうがなくなるが、その気持ちをどうにか抑え込む。
何が欲しいのなと問われると答えられる自信がないのだが、非日常を少しだけ味わってみたいという気持ちがあったりする。
毎日学校とバイトに明け暮れるが、もう少し楽しみが欲しい。
非日常=異世界的な何かだとクラスメイトが話しているのを聞いたことがある。俺も図書室のラノベを読み漁っているが、異世界系のラノベは非日常だなと思っている。
その中でもダンジョンという存在が一番非日常に近いのではと思われる。
ダンジョンがあると生活が豊かになり楽しくなるのだとか。クラスメイト談。
それに異世界召喚とか良くラノベにある話だけど、普通の高校生が異世界に行って生きていけるわけがないのである。
人間にしろモンスターにしろ、日本じゃ存在しないものがうじゃうじゃいる。人間はなんだ、危ない人達が大勢いるかもしれない。
素人が簡単に生きれるわけがないのだ。
それにどうしてダンジョンかと理由を説明すると、ラノベではダンジョンの中に存在するモンスターを倒すと魔石や素材を落としたり、中にはお宝が眠っているかも知れない。それがお金になるのだ。
だから今の俺にはそのダンジョン生活がお似合いだと思う。
フィクションの話なので日本で通用するかは別の話だ。
そういうことで、俺は地下ダンジョンをクリスマスプレゼントに願う。
それとやっぱ、家を手放したく無いので異世界召喚とかは嫌な話だ。
◇
昨日いつの間にか寝てしまい、気が付いたら朝になっていた。というが、早起きすぎてまだ時刻は5時だ。
まだ寝た方が良いのだろうが、あんまり眠れる気がしないので少し早いがバイトに行く準備を始めることにする。
顔を洗い、寝癖を治し、ランニングに行く。朝のルーティンだ。
それから2時間後、時刻は7時15分。家に帰って来た。
そこからランニングでかいた汗を綺麗に流してさっぱりする。朝食の準備を始めるが、特にこだわりはないので朝はパン派だ。たまに米にする時もあるけど、基本はパンだ。
トースターで焼いている間に、家の片付けをすることにした。
母の家は16年間放置していたこともあったからか、遺品やら捨てなくちゃいけないものが数多くある。
虫食いの服とか。カビた靴とか。汚いものは先に捨てたりしているが、それでも数が多い。
本当に整理するだけで時間が食われる。
「ん?」
2階に上がる階段の前にはトイレがあるのだが、そこのドアが少しだけ開いており、電気もそもそも消しているはずなのに僅かに光が漏れ出ているのを俺は気が付いた。
昨日使った後は閉めたはずなんだが。それに電気代が……。
そんなことを考えながら電気の有無含めて確認しようとドアを開けると、
「階段があるわ」
下ーー地下へと下がっていく階段がそこにはあった。ここには確かにトイレがあったはずなのだが。
しかしながら、階段の下の方は灯りがしっかりとあり、階段の下の方まで目視確認が出来るわけなのだが、流石に放置出来るほどの性格は持ち合わせていない。
なのでリビングに一旦戻った俺は懐中電灯を片手に地下へ続く階段を降りて行くことに決めた。
降りながらスマホの電波が大丈夫かどうかを随時確認しているが、圏外になることはなく最後まで電波はしっかり通っていた。
そして一番下に着くと同時に、
【木下 実 様を確認。プログラム始動。地下ダンジョンについての説明を開始しますが、実行しますか?】
という文字が目の前に現れたのだ。
【YES】or【NO】
読み終えると選択肢が現れる。なんか異世界っぽいな。
流石の展開と状況に驚きを隠せず頭が混乱する俺は、とりあえず自分の頬をつねってみることにする。
「普通に痛いな」
夢じゃなかったようだ。
現実である以上はこの問題を放置するわけにもいかないが、バイトもある。
しかしやっぱりこれを放置したら何か大変なことになるかも知らないと悟った俺は、バイト先に休む連絡を入れることにした。2つ。
頭が疲れてしまったのでこのまま「地下ダンジョン」についての調査をするわけにはいかないので、とりあえず布団に戻って英気を養いに行くことにする。




