35週目.魔王デルザムンド
「浩太!」
「ん?どうした?」
「俺も戦う」
「は?優作のジョブは料理人だろ?」
浩太は俺が心配みたいだ。
「大丈夫。浩太達が遠征に行ってる間、俺も鍛えた。それにこんな状況だし」
「それはそうけど…」
「フレイグに武器ももらった」
俺はフレイグに強化してもらった武器を見せる。
武器を持つ手が震えてしまう。
「大丈夫か」
「う、うん。ちゃんとお別れしたし、クシカーロが代わりに俺を見てくれるって」
「そうか…」
「うん。フレイグの為にも勝たないと」
「そうだな」
浩太は無理やり笑顔を作って、俺に向けた。
「おい。変な空気になってるな。てかまずは俺の武器がでっかいフライパンなのをいじれよ」
「ははは。そうだな」
浩太にはカラ元気なのがバレてるみたいだ。
浩太の笑顔もどこかぎこちなかった。
▽ ▽ ▽
ガシャダに殴られ、何度も吹き飛ばされた。
回復魔法が効いているのかもわからない。
視界もぼやけて、現状が全くわからなかった。
「ぐあっ!」
ガシャダの声が聞こえた。
ぼんやり見える景色が異様だった。
ガシャダが何かに吹き飛ばされた。
ぼやけているせいで何が起きているのかわからない。
ガン!
ガン!
聞きなれない金属音が聞こえてくる。
そしてガシャダらしき人物の周りが燃えている。
「コータさん。これを飲んでください。ポーションです」
「た、助かる」
ユナダラが俺にポーションを飲ませてくれる。
今まで飲んだポーションの中で一番苦かった。
俺は自分自身に回復魔法を使う。
少しずつだが、視界がはっきりとし始めた。
「これはどういうこと?」
俺はユナダラに問いかける。
「わかりません」
ユナダラも理解できていないようだ。
俺も自分の目で見ているのに、この状況が信じられなかった。
何故かユーサクがガシャダをボコボコにしていた。
2人の周りは炎に包まれ、ガシャダの立派の角は1本折れて瀕死状態。
ユーサクの手には巨大なフライパン。
そのフライパンでガシャダを殴って吹き飛ばす。
「がああ!」
ガシャダは身体を震わせながら何度も立ち上がる。
「どういうこと?」
「それがユーサクさんが倒れたと思ったら、急に動き出してガシャダを圧倒し始めたんです」
「どういうこと!?」
ユーサクを見るが、目がおかしい。
ふらつくガシャダの目の前で、ユーサクがフライパンを振りかぶる。
するとフライパンが変化をし、巨大な肉叩きのようになる。
そしてユーサクはガシャダにフルスイングをしてガシャダを地面に叩きつける。
ガシャダは気絶をしながら地面にめり込んだ。
そしてユーサクの身体は消えた。
俺は何が起きたか全くわからなかった。
ユナダラは気絶したガシャダを影で包んでどこかに運んだ。
多分奴隷解放が出来る人の所だろう。
俺は回復魔法とユーサクのおにぎりでやっと普通に動けるようになった。
「あのユーサクは何だったんだ」
俺は周りを見渡す。
すると龍化したドーザが倒れていて、ユイとソンブラが何かと戦っていた。
その相手は今までの奴らとは比にならない圧があった。
「あいつは?」
「あれが魔王デルザムンドです」
「あれが…」
俺はすぐにユイ達と合流するために飛んだ。
デルザムンドは紫黒い肌に筋肉質な体。
大きな角が下向きに2本生えていて、顔には長い髭を蓄えていた。
「お前が魔王か」
「また人族か。何故人族がいる」
「あ?説明する必要があるか?」
「何故人族がいる!!!!!」
魔王の言葉には圧があった。
俺は答えるつもりはなかったが、自然に口が動く。
「お前を倒すため、ゴフェルの手伝いだ」
「ほう。ゴフェルは人族のような雑魚に頼らないといけないくらい戦力が無かったのだな」
俺は喋らされたことに動揺した。
ユイとソンブラを見るが、2人とも震えている。
これが魔王の圧なのか。
「おい。人族!魔王の前で頭が高い」
「ぐっ!」
俺は何故か膝をついてしまう。
「バハハハ!お前達はそのまま動くな」
「ぐっ」
身体を動かそうとするが、全く動かない。
「そこのシャドウフォックスと女。この男を殺せ、そしてそこの男は抵抗するな」
「え?いやだよ。なんで?止まって!止まってよ!」
コ、コン…。
ユイとソンブラはゆっくりと俺に近づいてくる。
ユイとソンブラの目は潤んでいる。
魔王の命令には何か力が作用している。
俺もユイもソンブラも自分の意思で動くことができない。
「コータ!ごめんね」
「大丈夫だよ、ユイ」
俺は身体にありたっけの魔力を貯めて、無理やり身体を動かして2人の攻撃を避ける。
「ごめん。ユイ、ソンブラ」
俺はユイとソンブラを石の紐で拘束する。
俺を見た魔王は笑みを浮かべる。
「ほう。俺の命令に歯向かうとは生意気な人族だな」
「スキルなのか魔法なのかわかんないけど、めんどくさいことしてくんな」
俺は火の拳を魔王に放つ。
「無礼だ。俺に当たるな!あの男に当たれ」
魔王がそういうと火の拳がUターンして俺に向かってくる。
魔力操作をしても火の拳を止められない。
「俺の命令はどんなものも従う。お前のような例外は稀にいるが、俺に攻撃を当てることさえ出来ない雑魚だ」
「くそ。どんな能力なんだよ」
俺は風の盾で火の拳を防ぐ。
「なんだよ。お前のその力、最強すぎないか?」
「当たり前だ。俺は魔王だぞ。口の利き方に気を付けろ」
デルザムンドがそういうと俺の口が開かなくなる。
「石よ、砕けろ」
ユイとソンブラを拘束していた石が砂化して消えていく。
「お前達、命が尽きるまであの男を攻撃し続けろ」
「…や、嫌だよ」
…コン。
2人の身体は言葉とは裏腹に、俺に向かってくる。
「コータ!避けて」
ナイフを持ったユイの攻撃を避ける。
その隙を狙うようにソンブラの影が俺を刺し殺そうとしてくる。
「くっ。ごめんユイ」
俺はユイの腹を殴るが、しっかりと防御をされる。
ユイのナイフが俺の首を掠めそうになった瞬間、ユイとソンブラの姿が消えた。
「コータ様。肆の島の戦闘が終結したようなので、勝手ですが2人を移動させました」
「助かった」
ユナダラが機転を利かせて、2人を俺から離してくれたみたいだ。
「その影、魔人領で俺の邪魔をしている霊人族だな」
魔王の問いかけにユナダラは黙る。
「だいぶ手を焼かされたが、お前達を殺すマジックアイテムは手に入れた。この戦いが終わったら、お前の種族の殲滅をしてやろう」
魔王はそういうと笑みを浮かべた。
「本当にクソな魔王ですね。話を聞いてなかったのですか?」
「あ?」
「肆の島の戦闘は終結した。そして私がここにいる」
ユナダラの影から、何かが出てくる。
「デルザムンド。待たせてしまったみたいだな」
影から出てきたのはゴフェルとイヅクだった。




