35週目.豚バラおにぎり
今日は火曜。
時間がズレてるから、呼び出されるのは今日のはずだ。
「魔王軍との戦いが始まってるかもしれないから、サクッと食べれる料理にしよう」
俺は炊飯器2台のスイッチを押す。
そして冷凍庫から大量の豚バラ肉を取り出し、解凍をする。
「あっちで『異世界調理』をしている暇が無かったら怖いな。いつもより下準備を多めにしておくか」
俺は冷蔵庫から長ネギ・キムチ・生姜・梅を取り出す。
それらを刻んでボウルに入れておく。
「これを具材にして、おにぎりをあっちで握ればいい」
豚キムチ・ネギ塩豚バラ・生姜焼き・梅和えの4品を作る予定だ。
俺はできるだけ準備を進めて、呼び出されるのを待った。
▽ ▽ ▽
「コータ様!コータ様!」
翌朝、ユナダラに起こされた。
「ん?もしかして?」
「はい。魔王軍の船が見えました」
「わかった。すぐに準備するから、ユイ達も起こしてきてくれ?」
「わかりました」
俺の影が動き出し、ユイの元へ向かって行った。
俺は小屋を出る。
すると小屋の外はとんでもない異変が起きていた。
なんと外は猛吹雪だった。
昨日まで全く寒くなかったのに。
時間的に日が出ていてもおかしくない気がするが、雲が太陽を隠していて真っ暗だ。
「なんだこれ」
俺は吹き荒れる雪を見て首を傾げる。
「コータ様。情報では魔王が呼びだしたモンスターの力の様です」
「は?」
「ゴフェル様が言うにはテンペストレオというモンスターみたいです」
「なんだそれ。天気操るとか、先に伝えておけよ、アホゴフェル!」
俺は吹雪の中、海岸に向かって行く。
海岸に到着すると、再び驚かされた。
海が完全に凍っていた。
魔王軍の船に周辺から凍っているみたいで、氷上にちらほら光が見えた。
「氷を渡って上陸するとか聞いてないぞ」
俺は両手を上に向け、火の球を出す。
魔力を込めて、どんどん大きくさせる。
「これくらいでいいかな?」
俺は巨大な火の球を凍っている海に投げつけた。
そして小さな竜巻を数十個出し、伍の島の上にある雪雲を島から遠ざけた。
吹雪は止み、伍の島に面している海上の氷を少しだけ溶かした。
「コータさん!」
「コータ危ない!!」
ドーザとユイの声に反応して振り向くと、頬を何かが掠めた。
「ん?」
飛んできたものを見ると、金棒だった。
▽ ▽ ▽
私はヤディの報告で動き出した。
デルザムンドが『サモン』で呼び出すモンスターの存在をなんで忘れていたのだろう。
この猛吹雪を見て思い出した。
「ヤディ、船は?」
「吹雪が強くてしっかり確認できませんが、海が凍っているので氷を渡って上陸する気みたいです」
「魔王軍の船に乗り込んで情報を得れないか?」
「申し訳ありません。例のマジックアイテムがあり、影人族が近づくことが難しいです」
「なるほど。わかった。無理せず拾える範囲で情報を落としてくれ」
「わかりました」
私は空を飛び、魔王軍の船を確認する。
海は広範囲で凍っている。
肆の島の近くには4隻の船。
残りは伍の島に向かったのだろう。
「伍の島でも魔王軍の船を確認しました」
ヤディの報告と同時くらいに雪雲が薄まった。
「コータさんが魔法で雲を散らしたようです」
「カハハハ!さすがコータだな。こちらもやるぞ!イヅクに肆の島上空の雲を散らすように伝えてくれ」
「わかりました」
数分後、空をとても長い竜巻が蠢いて雲を散らした。
「ゴフェル様、船から兵士と奴隷達が降りてきました」
「わかった」
「タカさんとシゲさんと妖人族の戦士は上陸と同時に攻撃を仕掛けるつもりです」
「私も参加しよう。兵士は全員殲滅、奴隷は拘束しろ」
「はい。伝えます」
ヤディは私を飲み込み、妖人族の元に運んだ。
▽ ▽ ▽
「暴れんな!気絶してろ!」
俺は襲ってきた鬼のような人の腹に風の球を当てて気絶させる。
赤や青の肌で角が生えている。
この人達が鬼人族だろう。
鬼人族はものすごい勢いで、俺達に襲い掛かってくる。
その後ろから悪魔族の兵士が魔法で攻撃を仕掛けてきてうっとおしい。
「コータさん!私が後衛の兵士を対応します」
「頼んだ!」
「龍化!!」
ドーザは黄緑色の大きな龍の姿へ変わった。
「ギャアオオオ!!」
叫びながら地面を叩く、すると雪が積もった地面から木が生えてきて奴隷達に巻き付く。
ドーザはそのまま、後衛の悪魔族に突っ込んでいった。
「おお!すごいな」
事前にドーザのエクストラスキルについて聞いていた。
『森龍の加護』という木々を操ることができるスキルらしい。
「ユイ!ソンブラ!動けなくなってる奴隷達を気絶させて」
「うん!わかった!」
ユイは襲ってきている虫人族の攻撃を避け、回し蹴りで吹き飛ばした。
コンコーン!
ソンブラは周りを囲む敵兵を影で吹き飛ばした。
俺達は次々と襲ってくる鬼人族を気絶させていく。
「2人共、ユーサクを呼ぶから頼んだ」
「わかったー」
コンコーン!
俺はタブレット使ってユーサクを呼び出す。
▽ ▽ ▽
昼過ぎ。
まだ呼ばれない。
「魔王軍との戦いは今日じゃないのかもな」
そんなことを思っているとタブレットが鳴った。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットが鳴った。
「お!どっちだ?」
俺はレッドホーミングのマスクを装着した。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
目を開くとコータがいた。
そして物凄い寒い。
足元を見ると雪が積もってた。
「ユーサク!すまん。戦闘中だ。ユナダラと協力して、料理をみんなに運んでくれ」
「ユ、ユナダラさん?わ、わかった。」
周りを見ると、ユイとソンブラが鬼と戦っている。
「ユナダラ!ユーサクについていてくれ」
「わかりました」
声がすると、コータの影が動いて俺の影に入っていった。
「俺はこのまま戦と…」
コータが何かを言おうとした瞬間、目の前から消えた。
代わりに俺の目の前にいたのは、身体が大きく髭を蓄えた鬼だった。
「…悪いな」
そう言いながら鬼は拳を振り上げた。
そして拳は俺に向かって振り降ろされる。
俺は目を瞑ってしまう。
「おいおい!あぶねーな」
眼を開くと鬼の拳をコータが受け止めてくれていた。
「あんた、鬼人族の中でもだいぶ強そうじゃん」
「こ、こんなことになってしまってすまない。ワシはガシャダ。鬼人族の長だ」
コータとガシャダは殴り合いながら普通の会話をしてる。
「長か。安心しろ。すぐに助けてやる」
「すまない」
地面が盛り上がり、石の拳が出てきてガシャダが吹き飛ばされる。
「ユイ!ソンブラ!あいつは俺がやるから、他の奴を頼むぞ」
「任せてー!」
コンコーン!
「ユーサク、大丈夫か?」
「ああ。平気」
「じゃあユナダラと食事を頼む」
「ああ」
コータはそういうと、ものすごい速さでガシャダに向かって行った。
吹き飛ばされたガシャダは身体がさっきの2倍くらい大きくなっていた。
「俺は俺がやれることをする。異世界調理!」
俺がそういうと大量のフライパンが現れ、具材を炒め始めた。
そしてゴム手袋も大量に現れた。
おにぎりを握る準備は万全だ。




