チケット18枚目 アナログ時代の終焉
秋ツアーのスケジュールが発表された。
我が県は無事その中に載っている。
そして発表されたチケット取りの手段はいつものプレイガイド、電話予約、そしてコンビニ販売だ。前回一列目中を押さえてくれた音楽堂が今回も健闘してくれていると信じ、私はそこに並びに行く。
なお春、専務のコンビニチケットの席は普通だったらしい。十五列目とか二十列目とかで私の電話予約とそんなの変わらない。何時間もリダイヤルし続けるのとコンビニでぽちぽちっとやるのとが変わりがないのならコンビニでもいいかなと彼は笑っていた。まあ相方がJLサービスに並ぶという保険があるから余裕で笑えるんだろうけれど。
チケット発売日の二日前が来て、私は音楽堂へと並びに行った。今回は無理せず二徹だ。商店街の床で二泊することが無理してないと表現している時点でだいぶ頭がやられてる感はあるが、慣れきった段ボールの上で毛布を被ってまったりと過ごす。
音楽堂のメンツは多少変わっていた。以前ポップレコードで並んでた人たちが数人こちらに来ているのだ。
ポップレコードの件以外はごく普通のいつもの徹夜。
二徹目の夜、トイレのついでになんとなく真夜中の市街地を散歩する。
誰もいないポップレコード前。
JLサービスもいつもより少し人数が多い。
ダイオーに行った。ダイオーにしてはやはり人数が多い。先頭にいるのはいつもの彼だ。眠っているようなので特に声もかけず通り過ぎる。
ごく普通の並びの風景。
まさかこれが私たちの戦いのカタチの、最後の光景だとも知らず。
☆☆☆
十時が来た。
音楽堂の扉が開き、いつものとおり並びの列を崩さずプレイガイドの机へと規律正しく進む。
そしていちばん前のお姉さんたちは机の上の座席表を見て言葉を失う。
いちばん前が、六列目左だった。
ただならない雰囲気の中、仕方なくチケットは前のほうから買われていく。
私はというと二徹ならばヒトケタ列は当たり前とおもっていたところ、まさかの十四列目だった。春に電話でさらっと取った他県コンサートの席と大差ない。
準備されている席の数も少ない。
この並びの全員分は、まかなえないんじゃないだろうか。
私はすぐには帰らず、他のお姉さんたちと異変について話す。
「まずいね。これ、前回のポップレコードじゃん」
「JLサービス見に行ってみる?」
「私、自転車をそこの公園に置いてるから……」
そのとき十人ほどが息を切らして走って来て、そして音楽堂のチケット列の後ろに並んだ。
最初からいた人数分もないかもしれないのに、この人たちはいったい?
その答えはさっきの人たちから少し遅れて、戸惑う私たちのところに駆け寄ってきた青年が教えてくれた。ダイオー百貨店の列の先頭にいた彼だ。
「音楽堂、どうだった?」
「六列目からだった」
「……一階席だよね?」
「そりゃあ」
彼は一旦深く息を吐く。
お姉さんの一人が問うた。
「ダイオーの人だよね。ダイオーはどうだったの?」
「ダイオーは一階席すらなかったんだ。二階席の中盤と、後ろのほうが少しだけ。場所もだけど、数が全然足りなかった」
衝撃の発言。みな絶句する。
「自分は買ったけど……場所に納得できない人や、そもそも並んでた半数以上は席が足りそうになくて。何人かここにも来たんじゃない?」
「いくらダイオーでもそんな……」
「ここは数はどう?」
「少ないよ。たぶんこの列の全員分は無理。足りない」
そのときタイミングよく「当店分は完売ですー!」という店員の声が聞こえた。
買えなかった人たちはバラバラと、たぶんだけど公衆電話やコンビニへと走っていく。
大変動が起こっていた。
「ここ、最前は何列目!?」
ファンクラブ県代表が血相を変えて走って来た。
今まで見たことないほどに険しい表情をしている。きっとJLサービスも戦果はよくなかったのだろうとわかる。前回よりも、はるかに。
「六列目……です」
「六ね、わかった! ダイオー行くからまたね!」
「あ、自分ダイオーに並んでました。ダイオーは二階席のみです。最前は二階席十列目」
「え、ええ……?」
代表は言葉を失う。
JLサービスはと尋ねると、音楽堂と同じ六列目中がいちばん前だったという。
徹夜組の大敗北。
地元プレイガイドが全国チェーンのコンビニに勝てない時代がやってきていたのだった。




