チケット19枚目 大変動のあと
秋の自県のコンサートが開演された。
私たち徹夜組、県内の名だたる濃いファンたちはほぼ全員六列目より後ろにいる。五列目より前に目をやるとまったりとふわふわと聴いている観客ばかり。座っている人さえもいる。
私は十四列目。他県遠征ではよくある席。だから自分のいまいる場所に不満を言う気はない。でも前列のヤツらのノリの悪さは納得が行かなかった。
なぜ運だけのヤツが、そこにいることが許されているんだ……!
同じ秋ツアーの、他県コンサートも同じ状態だった。ヒトケタ席にいる人はろくに拳もあげず、六列目以降くらいからやっと、元気に飛び跳ねている人たちがいる。
どこの現地プレイガイドもコンビニに完敗していたのだ。
徹夜で並ぶという努力のカタチは終わりを告げた。
☆☆☆
翌年のチケット発売日の三日前、仕事帰りに寄った音楽堂の前には三徹するつもりの人はいない。
二日前、いつものお姉さんのうちのひとりだけが立っていた。
「こんばんは。二徹するんですか?」
「ああ久しぶり。そのつもりで来てたんだけど、一緒に並ぶ予定だった仲間が来たら帰ろうって言うつもり。……店員さんにこそっと言われたんだ。『本当はこういうこと言っちゃダメなんだけど、うちが用意できたチケット、二日も並ぶ価値ないですよ』って。一徹くらいは、するかもだけど」
「価値ないんですか……」
「うん。で、キミはどうする?」
「電話かコンビニやってみようかな?」
「そのほうがいいかもね。あああとね、ここのプレイガイドも今年度いっぱいで閉めるとも言われた」
「そっか……時代ですね……」
「うん、そうだね」
青春を駆け抜けた、いや、青春を寝倒したこの商店街にもう泊まることは一生ないんだな。
それはそれで寂しく思う。
つらかったけど、でも、とても楽しかったから。
「じゃあ私はJLサービスの前を通ってから帰ります。お疲れさまでした」
「うん。じゃあ、当日頑張ろうね」
JLサービスもほんの二・三人が並んでいるだけだ。私はそれを遠目で見て、そして家路に向かうバスに乗り込んだ。ダイオーは確認するまでもないだろう。
電話もコンビニも、たまにあるテレビ局などのスポンサープレゼントの枠も全て抽選。
運だけで席が決まる時代。
出来ることといえば複数手段で必要分以上にチケットを取ることで、いい席が当たる確率を上げるくらいか。
努力を否定され、運と資金力が支配する時代。
お手軽になった。
お手軽だけど……少し、寂しい。




