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81話 4章 ~日常編~ - 13

 食堂に向かった僕は入室と同時に時計を確認する。

 時刻は15時過ぎ。

 意外と時間は経過していたようだ。多分チハヤくんとやった保健室の片付けに時間を取られたのだろう。


 封筒の指定時間まで残り3時間弱。

 まだ時間はあるし、宝探しゲームの続きをして、外を見て日が暮れてきたらいったん食堂に行って時刻を確かめよう。

 そう決めた僕は色んな部屋を回ることにした。


 先程盲点だった、今はいない人達の部屋を中心に見て回った。


 しかしながら、『黒幕』の情報はどこにも無かった。


 そうこうしている内に時間は経過し、ちょうど1階に降りてみた所で、中庭が暗くなっていたのを見かけた。


「あ、もう18時になっているかも」


 確かめに食堂に行くと、時刻は既に18時10分だった。

 やはり時間感覚が鈍っているようだ。


 僕はその場で、18時くらいに開けるように指示された封筒を開いた。

 そこに入っていたのは――



『19時のアナウンスの時に、カフェテリアの中から窓を見て。

 そこで黒幕の正体が分かるから』



 またもや指定時刻に何かしろという指示だ。

 ユウリくんが昼に言った通り、18時に開けて、という指示は守っても守らなくても変わらないものだった。きっとユウリくんも同じような内容だったのだろう。


 とりあえず、ここにいてもどうしようもないので、指示通りカフェテリアに向かった。


 カフェテリアに入ると、そこには先客がいた。


「あれ、ユウリくん?」


「やっほーコータ」


 ユウリくんは、カフェテリアの中央の席で僕に手を振ってきた。

 僕は近くの席に座る。


「珍しいね、ここにいるの」


「だってナギサの手紙に指示されたからねー」


「え? ユウリくんも?」


「も、ってことはコータも同じだったみたいだね」


「うん。19時のアナウンスの時にカフェテリアの中から窓を見て、って書いてあった」


 僕が封筒を見せると、同じようにユウリくんもポケットから封筒を取り出した。


「じゃあみんなここに来るんじゃないかな。今って何時くらいか分かるー?」


「えーっと、さっき18時10分だったから……多分、15分とかじゃないかな」


「おー。じゃあユウリの体内時計大体合っていたんだー。すごいぞユウリー」


 自分自身を褒めるユウリくんに苦笑いを浮かべながら、僕はカフェテリアの奥に行って飲み物を取りに行く。


「そういえばマシロくんはいないんだね」


「マシロはユウリが来た時からいなかったよー」


「ふーん」


 ジンくんの保健室と同じようにずっといるイメージだったが、まあ、どうせみんな来るのだから待っておけばいいか。


「・・・・・・勝手に使っても怒られないよね」 


 紅茶パックを手に取りながらふと思う。

 まあ、マシロくんに怒られても怖くは無いと思うけど。


 なんて考えながら飲み物を手に取って元の席に戻る。


 そこから他の人を待った・・・・・・のだが。

 しかしながら、それからずいぶんと待ったが、誰も来なかった。


「来ないね」


「だねー。みんな封筒見ていないのかなー?」


「それはないと思うんだけど・・・・・・」


 そうユウリくんと会話をしていたところで、


『ピーンポーンパーンポーン』


 いつものクウギョのアナウンス前の音が鳴り響く。


『皆様19時になりました。夕食の時間です』


 結局、僕とユウリくん以外は集合しなかったか。

 とりあえず指示通り窓の外を見よう――


 ――と、目を向けたその時だった。



 突如。

 窓(・)の(・)外(・)で(・)何(・)か(・)が(・)落(・)ち(・)た(・)。



 一瞬だったのと、それでも見えたのが何やら黒いモノだったので、何が落ちたのか全く見えなかった。



「なっ!?」


 すぐさま窓の方へと駆け寄り、開けて下を見る。

 だが真っ暗で何も見えなかった。


「ユウリくん今の見た!?」


 僕は振り返って彼に聞いてみた。

 すると、既に彼はカフェテリアの出口に立っていた。


「コータ! ユウリは屋上に行ってくる! コータは現場に向かって!」


「う、うん! 分かった!」


 なんで屋上に行くのか分からなかったけれど、今はそのことを考えている場合ではない。

 僕は全速力で階段を降り、中庭へと向かう。

 向かっている途中、1階の中庭へと繋がる扉の前だった。


 そこにいたのはチハヤくんだった。


「ん? そんなに急いでどうしたよ、コータ?」


「どうしてって・・・・・・チハヤくんは見ていないの!?」


「見るって何がだ? ここの扉が開けっぱなしだったから何かあんのかって思って観察していたところだ。普段閉まっているからな」


「開いていた・・・・・・?」


「ああ。行こうにも暗くてな。誰かの罠なんかじゃねえかと思って躊躇してたんだよ。せっかくだ、一緒に行こうぜ、コータ」


「ちょうど僕も中庭に行くのが目的だったんだ。行こう、チハヤくん」


「おうよ」


 こうしてチハヤくんと一緒に、僕は中庭へと足を踏み入れた。


 中庭は真っ暗だった。

 建物の光があるとはいえ、それは微かであり、茂みの中などは全く見えない。

 聞こえるのは風で揺れる木々の音だけだ。少しの音でもびくりと反応してしまう。


「くそっ。懐中電灯とか持ってくりゃ良かったな」


「そうだね。倉庫にならあったっぽいね。・・・・・・他に明かりになりそうなものとかないかな。チハヤくん、ライターとか持っていない?」


「おいおい、俺様がタバコとか吸いそうなイメージだから言ってんだろ? 持ってねーよ。持っているのは部屋にあった封筒と、スマホくらいなものだぜ」


「スマホ・・・・・・そうだ!」


 僕はスマホを取り出し、色々と見てみる。


「あった。ライトモード」


 モードをオンにすると、スマホから光が放たれる。

 懐中電灯レベルの明るさではないが、それでも周囲を2~3メートル程度は照らせるくらいの光量はあった。


「あー、そういうのあったな」


 即座にチハヤくんもスマホのライトをつける。

 そこから僕達はゆっくりと周囲を照らしながら進んでいく。


「で、コータ、どこに向かっているんだ?」


「えっと、カフェテリアの近くだから・・・・・・あれ、あの明かりってどこの部屋だっけ?」


「おいおい。そんなのも忘れたのかよ。あそこは・・・・・・どこだっけな」


 チハヤくんも分からないようだ。

 とりあえず3階で明かりが付いている部屋の真下を目指そうと上を向いたところで、声が降ってきた。


「コータ! いるー?」


「その声・・・・・・ユウリくん!?」


「やっぱりいるねー!」


 声が上から返ってくる。屋上に行くと言っていたから、そこにいるのだろう。

 と。

 屋上の所で、チカリ、と光が見える。


「上を見てー! ここの真下にさっきなんか落ちたと思うー!」


 ユウリくんはカフェテリアの真上から照らして場所を教えてくれているということに気が付いた僕は「分かったー!」と大声を宙に返しながらその場所を目指す。


「おいおいコータ、そろそろ何があるのか教えてくれ」


「さっきカフェテリアにいたんだけど、その窓のすぐ傍に、何かが落ちてきたんだ」


「落ちてきた・・・・・・? まさか・・・・・・」


「分からない。だから確かめるんだ」


 ・・・・・・最悪の想像は、カフェテリアにいた時からしていた。

 でも敢えて口にはしなかった。

 言ってしまったら現実になりそうで。



 だけど――嫌な予感ほど当たるものだ。



 ユウリくんが指し示した建物の近くの茂みの中。

 そこにあったのは、大きなキャンバスだった。


 ケンタロウくんの事件で落ちていたのと同じくらい大きなキャンバス。


 だが絵は何も描かれておらず、あの時とは違ってイーゼルはない。 


 これが落ちたのか、と最初は思った。

 しかし、すぐに違うと分かった。


 キャンバスの下。

 そこに何(・)か(・)が(・)あ(・)る(・)のはすぐに分かったからだ。


 何故ならば、そのキャンバスはその人物に斜めに掛けられているかのように置いてあるだけで、その半分は露出していたからだ。


「嘘だろ・・・・・・」


 震えた声は、チハヤくんから放たれた。


 無理もない。

 彼が一番信じたくない光景が、そこにあったからだ。


 動けない彼の代わりに、僕は確かめるためにキャンバスをどかした。



 その下から現れた人物の名は――蛇見(じゃみ)ナギサ。



 その顔はスマホのライトで照らされたせいもあるのか驚くほど青白く、生気を既に失っていた。

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