77話 4章 ~日常編~ - 09
ぼーとしながらなんとなく歩いて行った先はプールだった。
ここになら『黒幕』の手掛かりがあるんじゃないかという、いわば直感だ。
・・・・・・ユウリくんの『能力』じゃあるまいし、本当にただの勘だけれど。
そんな適当に向かった先には、とある人物がいた。
ナギサくんだった。
彼は必死な様子でプールサイドにあるものの裏などを探しており、こちらに気が付いた様子はなかった。
「ナギサくん」
「っ! あ、なんだ、コータクンか・・・・・・」
びくり、と驚いた反応を見せた後、彼はほっとしたように胸をなで下ろした。
「ずいぶんと集中していたみたいだけど、何か見つけた?」
「ううん。何も・・・・・・」
彼は肩を落とす。
「宝探しゲームって名目なのに何のヒントもないし・・・・・・普通宝の地図的なものがあるはずだろ・・・・・・なんでとにかく探せっていう感じなんだよ主催者側にクレーム入れたくなるね・・・・・・」
呪詛のごとく吐き出される言葉に少し圧倒されつつ、僕は彼に問いかける。
「何もなかったって話だけど、朝、部屋の前に封筒とか無かった?」
「え・・・・・・ということは、コータクンの部屋の前にもあったの?」
目を見開く彼に僕は頷きを返す。
「僕の部屋の前にもあったよ、封筒。そこには『黒幕』の情報が書いてあったよ」
「やっぱりそうか。どんなこと・・・・・・っ」
ナギサくんは胸の前で手を押さえる仕草をする。
「・・・・・・いや、こっちの情報を教えないでそれを訊くのはずるいよね」
「ということは、ナギサくんは教えられない感じ?」
「うん。おれの情報はちょっと誰にも教えたくないかな。ごめんね」
それって何で――と訊こうとしたが、それを気にするのは『黒幕』だからだろう、と思われるのも嫌だった。あれだけ『黒幕』のことを必死で探していたナギサくんのことだ。そういう反応を見ている可能性もある。
ならば
「分かった。教えなくていいよ。でもこっちは伝えるね」
「え!?」
少しでも彼に協力するために、こちらからの情報は渡そう。
何せ僕にとってはデメリットでも何でも無いし。
「いいの?」
「うん。だってナギサくん、『黒幕』のことずっと探していたじゃない。だったら協力するのは当然だよ」
「・・・・・・、・・・・・・」
彼は何かを言おうと口を開け、そして下を向くと小さく首を振った。
「ごめんね。じゃあ遠慮無く情報を貰うね」
「うん。これだよ」
僕は封筒を彼に手渡した。
彼は中身を確認すると、あからさまにがっかりした表情をした。
「ごめんね。こんな情報しか僕、持っていないんだ」
「あ、うん。こっちこそ見せてもらったのにごめんね」
ナギサくんは封筒を返しながら僕に頭を下げてきた。
「あはは。どうしようもない情報で何の役に立っていないよね」
「ううん。そんなことないよ。情報の当たり外れがあるってことが分かったのは大きかったよ、ありがとう、コータクン」
彼のその口ぶりから、何となく察してしまった。
ナギサくんの情報は、いわゆる、当たり情報なのだと。
「じゃあ、申し訳ないけどおれ、他の所行ってくるね」
「あ、うん。情報、見つかるといいね」
「ありがとう」
手を振って、彼はプールから出て行った。
いなくなった後、僕は思考を燻らせる。
(――見せたくないということは、こっちに該当するような情報だったのか・・・・・・一体どんな情報を出しているんだ、主催者側は・・・・・・)
中身が非常に気になるが、それを見る手段はもうない。
思考を切り替えて、僕は先程までナギサくんが探していたであろう場所以外の所を、念のため探してみることにした。




