↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
83/105

76話 4章 ~日常編~ - 08

 食堂を出てちょっと歩いたところ。

 そこで僕は唐突に、あることに気が付いた。


「あ……ユウリくんと黒幕の情報が違う前提で話してたけど、部屋に差し込まれている情報だから同じ可能性もあったよね・・・・・・こっちの情報共有して確認した方が良かったな・・・・・・」


 折り返すべきかどうか考え込みつつ1階の曲がり角に差し掛かったその時――


 ふわっとした何やら柔らかい感触に当たった。


 その突然やってきたあまりのふんわりとした感覚に、僕はびっくりして転んでしまった。


「大丈夫か、猫泉コータ?」


 手を差し伸べてきたのはジンくんだった。


「あ、うん。ありがとう。ごめんね。考え事をしてて前を見てなかったよ」


「こちらこそすまない」


 僕はその手を取って立ち上がるが、ふと違和感を覚える。


「あれ? ジンくん、なんにも持っていない?」


「ん? 何も持っていないが」


「あ、うん。そうだよね」


 先程の感触は一体何だったのだろうか。見るからに彼の手にも、その周辺にも何もない。いつもと同じ白衣を羽織っている姿で、変化点と言えば、そのポケットから見える封筒くらいだろうか。


「ジンくん、その封筒は・・・・・・?」


「ああ、これか。これは『黒幕』の情報だ」


「『黒幕』の情報!? じゃあジンくんの部屋の前にもあったんだね」


「猫泉コータもか」


「うん。ほら」


 僕もポケットから封筒を取り出す。


「ねえ、ジンくんのにはなんて書いてあったの?」


「いや、他の人に見せるのは・・・・・・と、猫泉コータならよいか」


 ジンくんは封筒をポケットから取り出す。


「中の情報について、他の人には絶対に伝えない、という約束は出来るか?」


「何か理由があるんだね。・・・・・・うん。分かった」


 頷くと、ジンくんは封筒を僕に手渡してきた。

 そこに書いてあったのは――



『黒幕は神になろうとしている』



「ジンくん、これって・・・・・・」


「口には出すなよ、猫泉コータ。君にだけは見せていいと思った理由が分かるだろう?」


「うん」


 書いてある通り『黒幕』が神になろうとしているのであれば、神になる権利を持たない『ネコ』は該当しない。

 つまり僕は対象外だということだ。


「猫泉コータのはこれとは違うのか?」


「あ、うん。僕のはこれだよ」


 ジンくんに自分の封筒の中身を見せると、彼は眉をしかめた。


「こんな当たり前のことしかなかったのか?」


「そうなんだよね・・・・・・やっぱりネコだからこの程度の情報しかもらえなかったのかな」


「可能性はあるな。ただ、私と同じようなケースを考えれば、この情報で除外できる人物がいるということだが・・・・・・流石に死んだ者も含めて女性はいないだろうな。少なくとも私が検死した3人ではないのは断言できる」


 実際に身体を確認したジンくんが言うなら間違いない。


「うーん・・・・・・でも僕達の中に女性がいたとは思えないよ。だからただのハズレ情報なんじゃないかな」


「その可能性が高いな。いずれにしろ他の情報を手に入れて傾向を確認したいところだ。では、私は探しに行くとする」


 ジンくんは僕に背を向けると、すたすたとその場を離れていった。その早さたるや僕が声を掛ける暇も与えないほどだった。


(それ程、黒幕の情報がほしいってことか)


 ナギサくんといい、ジンくんといい、本気で『黒幕』を探している様子から、当人がその『黒幕』だとは思えない。しかし、それもポーズの一種なのかもしれなくて――


 ――などと、また深く考え込んで意識もそぞろのまま、僕は当てもなく他の場所へと歩いて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。