73話 4章 ~日常編~ - 05
死体安置室で少し考え事をした後、僕が次に向かったのは円卓の部屋だった。
思えばこの部屋はそんなに入ったことはなかった。
普段はテーブルが並べられているだけの部屋で、目的もなく入る場所ではなかったから。
そんな場所なのに、入ってみたらそこにはナギサくんがいた。
彼は中央部の床面を調べている様子だった。
「何しているの?」
声を掛けると彼は顔を上げてこちらを見てきた。
「ああ、コータクンか。何か黒幕に繋がる証拠がないかって調べているところだよ」
ナギサくんは当初からずっと黒幕を探している。その姿勢はぶれていないことからも、彼が黒幕とは到底思えなかった。
「何か繋がりそうなものはあった?」
「いや、残念ながら今の所は何も見つかっていないよ」
首を横に振る。
「ここから繋がっているだろう、あの処刑の部屋への道を探ってみたんだけど、どのようにあの空間に行くのかすら全く分からないんだよね。足下も穴が開くようにはなっているようだけど、スイッチとかがないからこれ以上は分からないよね」
結構詳しく調べているようだ。
それでも黒幕には結びついていないのか。
「凄いね。もうナギサくんが調べていないことはなさそうだよ」
「うん。だけど何も成果を得られていない・・・・・・心が折れそうだよ」
ナギサくんは拳をぎゅっと握りしめる。
「それでも、おれは諦めないで黒幕を探し続けるよ。絶対に見つけてみせる」
「だね。僕も黒幕は絶対許せないよ。絶対見つけようね」
「うん」
決意に満ちたその目を見て、ふと気になったので聞いてみる。
「ねえ、もし黒幕を見つけたらどうするの?」
「見つけたら、か」
ナギサくんはパーカーの紐を握りながら考えるそぶりを見せる。
「そうだね。この宴を終わらせるようにするだろうね。黒幕ならばそれくらい出来るだろうし。それに、仮にもし出来なくても――おれが終わらせるよ」
そういうナギサくんの表情は、まさに鬼気迫るものであった。
思わず気圧されるほどに。
彼の覚悟は相当なものだということが身に染みた。
だからこそ警告する。
「・・・・・・黒幕は許せないけど、でも、無茶はしないでね、ナギサくん」
「それは無理だよ」
即座に否定の言葉が返ってくる。
「おれはどんな手段を使ってでも、黒幕を見つけ出す。絶対にだ。
――だから、もうちょっと何か無いか探してくるよ」
ナギサくんはくるりと背を向けると、再び円卓の部屋の奥の方へと向かっていった。
そんな彼に僕は掛ける言葉が見つからず、気まずい状態のまま部屋を後にした。




