72話 4章 ~日常編~ - 04
せっかく3階に上がったので、他の部屋を見ていくことにした。
保健室はジンくんがいるので飛ばして、残る3階の部屋である美術室を除いたのだが、そこには誰もいなかった。実質の主であったケンタロウくんがいなくなってから、寂しくなったものだ――なんて寂寥感を覚えながら4階に上がる。
その中の一室、死体安置室に入ると、そこにはカプセルの横で座り込んでいるチハヤくんの姿があった。
死体安置室にいるのがとても意外すぎて思わず棒立ちしてしまっていると、チハヤくんは振り向いてこちらに話しかけてきた。
「コータか。こんな所で何をしているんだ?」
「僕は今来たばっかりで何も・・・・・・というか、それはこっちの台詞だよ。ここで何をしていたのさ、チハヤくん?」
「懺悔だよ」
懺悔。
彼の口から出てきた言葉に、驚きを隠せなかった。
誰に、と聞く前に、彼の近くのカプセルに貼ってあるネームプレートに気が付いた。
それは――牛島タケルくんだった。
「俺様はタケルに無駄なケンカを売って事件の発生原因になった。それを後悔して同じような真似をして殺人をさせねえようにしてたんだが・・・・・・それすら利用されちまったからな。体育館にいることがまさか計画の一部に利用されるなんて思わなかったな」
深くため息を吐く。
「何もかも空回りして、流石の俺様も痛感した。あの場所にいることは逆効果だったってことがな」
「そっか。だから体育館にいなかったんだね」
「ああ。もう意味のねえことだって知っちまったからな。もう体育館に常駐するのはやめにしたぜ。・・・・・・辛かったのもあったしな!」
手を組んで伸びをしながら、明るい声音でそう言うチハヤくん。
だけど、それが強がりによるものだっていうのは僕でも分かった。
「ってなわけでよ、俺様はもう大人しくしていることに決めたんだ。前みたいに余計なことをするつもりはねえよ」
「余計なことだなんて・・・・・・」
「実際そうだったんだから庇わなくてもいいぜ、ありがとうな。・・・・・・さて」
チハヤくんは膝をパッパッと叩いて立ち上がると、ポケットに手を突っ込みながらこちらに向かってきた。
「そろそろ寝る時間になるんじゃねえか。俺様は部屋に戻るぜ」
「あ、うん。おやすみ」
「おう」
そのままチハヤくんは部屋から出て行った。
その後ろ姿は、なんだかいつもとは違って小さく見えた。




