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71話 4章 ~日常編~ - 03

 電気室に続いて地下の他の部屋を見て回ったが、そこには誰も居なかった。なので1階に戻って徘徊していると、ふと食堂の中に誰かがいることに気が付いた。

 相手も僕に気が付いたようで、声を掛けてくる。


「あ、コータさん」


「マシロくん。食堂に何の用・・・・・・って、その手にあるの何?」


 彼は大きな紙袋を2つ重ねるようにして抱えていた。


「ああ、これ。これはね、お菓子作りの材料だよ。カフェテリアにあるものだけでは足りないから、クウギョに言ったら、食堂まで取りに来るように言われたんだよ」


「お菓子作るんだ。というかクウギョも呼びつけずに、カフェテリアまで持って行けばいいのに」


「あはは。あのヒレでどうやって持つのさ」


「いや、料理とか持ってきているじゃん」


「あ、確かに」


 紙袋を近くの机の上に置き、手をぽんと打つ。その動作のために置いたのか、はたまた持っているの重かったから置いたのか――


「あ、一個持つよ」


「いいの?」


「ちょうど2つあるし。っていうか呼び止めてごめんね」


「いやいや、助かるよ。ありがとうございます」


 ぺこり、と仰々しく頭を下げてくるマシロくん。動作が小動物じみて可愛らしい。

 そう微笑ましく思いながら、僕は荷物を手に持つ。


 ・・・・・・意外にもずっしりした重さを感じた。

 これを2つ持っていたなんて、マシロくんは意外と力持ちなのかもしれない。


 そうしてそのまま食堂を出てカフェテリアに向かいながら、僕はマシロくんにふと疑問に感じたことを問いかける。


「そういえばお菓子って何を作るの?」


「クッキーだよ。これならば皆さん、好きな時につまめるし、常温でも別に問題ないからね」


「なるほど。でもクッキーってそんなにパパッと簡単に作れるモノなの?」


「んー、クッキーは比較的簡単かな。時間は掛かるけどね」


「あ、だから夜の内に仕込んでおいて、翌日に備えとくってことか」


「そうそう。家にいた時はそうしないと、材料状態でちび達が食べちゃってたからなあ」


 遠い目をするマシロくん。


「・・・・・・ねえ、マシロくんは、ここから出たいと思っている?」


「んー」


 マシロくんは困ったように眉を下げる。


「勿論、こんな殺人が起こる場所なんていたくない。いたくないけど、でも、殺人が起きなければここは案外いい場所なんだよね、僕にとっては」


「え?」


「だって誰にも邪魔されずにお菓子作りとか出来るし、1人部屋だし、食事の用意はしなくてもいいし――あ、そういう面では、ってことだよ。勿論、閉じ込められていること自体が最悪だから、出たいって言うのが当たり前だと思うけどさ」


「・・・・・・そっか」


 この反応を見るに、ジンくんと同じで、殺人を犯してまで出たいという気持ちではないのだろう。

 少し安心したところでカフェテリアに着き、感謝の言葉を口にしながら頭を何度も下げるマシロくんに苦笑しながら、他の部屋へと向かった。

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