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67話 3章 ~処刑~

 ――どうして!


 喉から叫びを貼り付けさせながら、自分はどこかの空間へと移動させられていた。

 暴れようとするが、手足は拘束されていてビクともしない。


 自分は、結局自分のことしか考えられなかった。


 誰かを殺そうと考えた。

 だけど駄目だった。


 他人を殺すという決断を出来なかったからだ。


 誰かに助けてと求めた。

 だけど実際には声に出さなかった。


 他人任せすら出来なかった。


 だけど結局はどうだ。


 サスケさんに半ば強制的に殺させられた、と、他の人は思ったのかもしれない。


 でも違う。

 サスケさんは、自分の願望を汲み取って、セッティングしてくれていたのだ。


 逆なのだ。


 サスケさんが自分にさせた、ではなく。

 自分がサスケさんにさせた、のだ。


 だから今ある感情は、サスケさんに対しての恨みなどではない。


 自身への怒りだ。


 これだけお膳立てしてもらったのに碌に出来ない、自分の無能さだ。

 今までは隠れていただけで済んでいたが、どこまで行っても『落ちこぼれ』なのだ。


 何故彼の意向をきちんと汲み取れなかった?

 何故あがこうとしなかった?


 意地汚くても、どんな手段を取ってでも、自分は生きなきゃならなかった。

 もがかなくてはいけなかったんだ。


 ・・・・・・今更後悔しても遅い。

 もう自分はこのまま殺されて――



 その時だった。

 唐突に、歌(・)が聞こえた。


『もーもたろさん ももたろさん。おっこしにつけたきびだんご

 1つ私にくださいな』


「むぐっ!」


 突然、口の中に何か突っ込まれた。

 暗闇のせいで何も見えない。


 急いで吐き出そうとしても口元を押さえる何かは一向にどく気配もない。

 手も足も使えないし、わめいても息が出来なくて苦しいだけだった。


 舌がその何かに触れる。

 甘い味がした。


 直感的に思った。

 これは、先程唐突に聞こえてきた歌にあった『きびだんご』なのだと。


 それを食べろ、ということなのだろう。


 そう考えた瞬間、息苦しさも相まって思わず歯でかみ砕き、飲み込んでしまった。


 美味しいとかそういう感覚は全くなかった。


 あったのはただの恐怖。

 最初の甘味以外はまるで味がしなかった。


 このままきびだんごを詰め込まれて窒息でもさせられるのか――などと考えて身構えた、その時だった。



「なーにやっているっすか」



「え?」


 自分の目は、信じられないものを捉えていた。

 いつの間にか明るくなってた部屋の中に、彼がいたのだ。


 自(・)分(・)が(・)殺(・)し(・)た(・)、こ(・)こ(・)に(・)い(・)る(・)は(・)ず(・)の(・)な(・)い(・)彼(・)が(・)。


「サスケさん・・・・・・なんでここに・・・・・・?」


「それは俺っちが聞きたいっすよ。ここはどこなんすか?」


 サスケさんが自分と会話してくれている。

 会話できている。


 それだけで涙が出てきた。


「あっ。何泣いているんすかこの犬は。泣くの字が違うっすよ。きゃんきゃん鳴く方じゃないっすか」

「うん・・・・・・そうですよね・・・・・・」


 涙を拭いて顔を上げた所で、



「なんだ? 会ってまだ10秒も経たずに、またケンカをしているのか、君達は」



 自分の思考は停止した。


 サスケさんの隣に、もう1人。


「ツバメさん・・・・・・?」


「なんだ、そんな信じられないというような目で見て。まあ、ボクも何故ここにいるかは全く分からないのだがな」


 困ったように笑顔を浮かべる、ツバメさんの姿がそこにあった。


 自分はいてもたまらず2人の元へと駆け寄り、そして抱きしめた。


「ちょ! いきなりなんすか!?」

「熱烈な歓迎だな、ヒナタ君は」

「だって・・・・・・もう、会えるなんて思っていなくて・・・・・・」


 サスケさんがいる。

 ツバメさんがいる。


 ここにいる。


 それが嬉しくて、2人を抱きしめる腕に力が入る。


「あー、ヒナタっち、そろそろ離してもらえると」

「嫌です! 離しません!」

「そうとは言えなくなったみたいだぞ、ほら」


 ツバメさんが自分の背後を指差す。


 そこにいたのは、多くの何か。

 角が生え、牙を剥き出しにし、こん棒を携えた集団。


 その見た目は正しく――鬼(・)だった。


「あー、なるほど。鬼退治っすね」

「鬼退治?」

「ああ、桃太郎だからな。犬、猿、キジ・・・・・・ボクはキジだったのか。どちらかというと能力的にニワトリだと思っていたが」

「まあ細かいことはいいんじゃないっすか。要するに――こいつらを倒せってことっすよね」


 そうか。

 こいつらを倒せば、自分達は目的を果たせる。


「あ、でもこっちには武器とか何も・・・・・・」

「そうだな。だが、無くても行けるだろう」

「そうっすよ。俺っち達3人なら、武器なしで鬼達と戦えるっす。桃太郎の話でもそうだったじゃないっすか」

「っ! そうだね」


 大きく頷く。


 出来る。

 自分達ならば鬼だって退治できる。


 サスケさん、ツバメさんと目を合わせ、


「行きますよおおおおおおおお!」


 叫び声を上げながら自分は鬼達の元へと突撃していった。

















 ・・・・・・あれ?

 なんで自分は突撃しているんでしたっけ?


 向かっているのは自分だけ?


 サスケさんとツバメさんは?


 そもそもなんでここにいるんでしたっけ?


 あれ?

 そういえばいつ手足の拘束が外れたんですか?


 あれ?

 そもそも何で拘束されていたんでしたっけ?


 あれ?

 そういえば桃太郎って、犬、猿、キジの他に誰か――








 ――グシャ。

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