57話 3章 ~日常編~ -15
翌朝。
『ピーンポーンパーンポーン』
『皆様おはようございます。6時になりましたのでお知らせします』
いつもの朝の放送が流れる。
その放送よりも早く起きていた僕は、即座に部屋を出た。
廊下に出て見回ると、同じタイミングで部屋を出ていたのはチハヤくんとナギサくんだった。
「おうコータ、ナギサ来たな」
「おはようチハヤクン、コータクン」
「おはよう、チハヤくん。具合はどう?」
「正直まだ痛むけど、昨日の夜よりマシだな」
空元気なのかどうかは不明だが、昨夜倒れていた時に比べると問題はなさそうに見えた。
「んじゃ、犯人捜しに行くか」
「どこから探しに行く?」
「昨日の続きで1階からだろ」
「そうしようか」
「今回はヒナタクンもいないみたいだし、中に入って探そうか」
「一晩経ったら血の匂い消えているかもしれないしな。せっかくだし、もう一度、全部回ってみるか」
「なら最初は娯楽室から行ってみようか」
「そうしよう。チハヤクンもいいよね?」
「ああ」
そうして僕達は1階に降りて、娯楽室へと向かった。
――その部屋まで来たところで。
突如、強烈な不快感が襲った。
「なんだ・・・・・・これ・・・・・・」
「ぐっ・・・・・・」
「これは・・・・・・」
不快感の正体は――異臭。
鉄の錆びたようなツンとした、生臭い匂い。
匂いというよりも、臭い。
昨晩、部屋の前を通った時にはなかったもの。
「どう見てもここだよね」
ナギサくんが指さしたのは娯楽室。
臭いの中心はこの部屋にあるはずだ。
不快感を乗り越え、僕は娯楽室の扉を開く。
だが――
「・・・・・・開かない」
「いや、ちょっとは開いてるよ」
「うん。でも中に何か突っかかっているみたいだ」
何か障害物のようなモノがあるのか。
出来た隙間からのぞき込もうとしても何も見えない。
「どいてろ」
チハヤくんが扉の前から距離を取る。
僕はそれを見て慌てて止める。
「待って!」
「なんだよコータ。止めるんじゃねえよ」
「蹴り飛ばしちゃ駄目だと思う」
「何でだよ?」
「この前の美術室と同じで、最悪なことが起きている可能性があるからだよ」
その言葉にチハヤくんもハッとする。
危うく犯人に利用されかけたことも思い出したのだろう、チッと舌打ちをする。
「だったらどうするんだよ。扉も1個しかねえし、外から入るのか?」
「いや、1階の部屋には窓がなかったはず。だから無理だよ」
「ならやっぱ蹴っ飛ばすしか」
「ちょっと待って」
ナギサくんが今度は割り込んでくる。
「これなら行けるよな・・・・・・倉庫に道具取ってくる」
彼はそう言い残してその場を離れると、数分後、何やら棒状のモノを持ってきた。
「お待たせ」
「これは・・・・・・バール?」
「隙間も出来ているし、行けるんじゃないかと思う。これでこじ開ければ中の状態は保存できるはず」
「よし、じゃあやるぞ」
ナギサくんからバールを受け取ったチハヤくんは、僕が力で少し開いた扉にバールを捻りこませる。
そして――
バリバリバリバリ
扉を壊す形で、こじ開けた。
扉の前にあったのはビリヤード台だった。
もちろん、扉の前に置いてあるのは普通じゃない。
だけど、これだけならば押して開けるはずだ。
では何故、押し開けられなかったのか。
その答えは、ビリヤード台を乗り越えた先にあった。
カーペットの色は元からそうだったかのように、赤に染まっていた。
その赤の中心にいたのは――見知った顔だった。
彼は胸から腹まで全面が赤く染まっていた。
そしてその腹部には、包丁が刺さっていた。
チハヤくんの時とは違う。
もはや確認するまでもなかった。
ビリヤード台に寄り掛かるようにいたのは――猿島サスケ。
あの明るい彼が笑うことは、二度となかった。




