55話 3章 ~日常編~ -13
「楽しかったねー! ということでかいさーん!」
ユウリくんの号令を持って、僕達は散会した。
余韻が残っているが、残っているのは余韻だけではなかった。
花火で使った道具類の片付けがあるからだ。
とはいえそんなに多くなかったので、各自がそれぞれ適度に持ち帰って処分することにした。
僕の担当はバケツに入った花火のゴミを片付ける役割だった。じゃんけんで負けたのだ。
(さっきの線香花火勝負の結果で決めればよかったのに・・・・・・)
不満を抱えながらも、どこに捨てればよいか迷ったので食堂へと向かう。
食堂に入った途端に時計が目に入る。
時刻は21時15分を越えていた。
「そんなに時間が経っていたのか・・・・・・」
予想以上に時の進みが早い。
驚きながらも、目的であるゴミを捨てる為に奥へと進み、置いてあったゴミ箱の中に花火の残骸を取り分けて入れる。
残ったのはバケツの中にある水だけになったが、これは中庭にでも捨てればいいだろう。
僕は食堂を出ようとした時、ちょうどヒナタくんがやってきた。
「お疲れ様です、コータさん」
「ありがとう。ヒナタくんはなんか食堂に用事があったの?」
「はい。ちょっとパーティーで片付け忘れたモノがあったのを思いだしまして」
「あー、なんだかんだバタバタしてたし、抜けていたのがあったか。ごめんね」
「コータさんが謝ることじゃないですよ」
笑顔で手をひらひらと振って、彼は食堂の奥へと向かっていった。
その後ろ姿を見届け、僕は中庭へと向かった。
中庭に入ってすぐ脇の所で、バケツの水を捨てる。
花火の残骸もちょっとあったけどこれでいいんだっけ、環境破壊にならないかな――なんて考えていたが、ここは現実と少し異なるというクウギョの言葉を思い出して、まあいっかと思い直す。かといって適当なところに捨てる気は起きないけれど。
――なんてまた深く考え込んでしまったところで、空を見上げる。
雲一つないのに、星も月も全くない、漆黒の空。
屋上とは違うのは、周囲の光が見える範囲が広くなっているからだろうか。
とはいっても、1階部分は窓がないので、主に3階の光がそれを感じさせている。
「多分カフェテリアの光かな、あれ。ってことはマシロくんがいるのかな」
なんてことを口にした。
直後だった。
突如。
建物から光が消えた。
「なんだ!?」
途端に周囲が暗闇になったことで、視界が闇に覆われる。
目を開けているのに全く何も見えない。
(落ち着け・・・・・・)
動こうとしたが、ここは外だ。むやみやたらに動いて木とかにぶつかったら怪我をするかもしれないし、足下も危ない。
「多分ブレーカーが落ちたのかな・・・・・・電気が付くまで大人しくしておくか」
そう思って数分くらい待機したが、一向に付く気配はない。暗闇にも目は慣れていない
距離的には地下への階段も近いし、自分が行くべきなのかもしれないが、真っ暗なままで進む勇気はない。
何か明かりはないか――
「あ」
僕はポケットを探る。
そこからスマホを取り出してボタンを押すと、画面が光った。
微弱ながらも照らすことが出来そうだったので、僕はその光を頼りに中庭から建物の中にゆっくりながら戻る。
目指すは電気室だ。
真っ暗な中を慎重に進み、階段をゆっくりと降りる。
やがて電気室にたどり着く。
予想通り、ブレーカーが落ちていた。
僕は即座にそれを上げる。
途端に電気が付く。
「よかった・・・・・・しかし、ブレーカーが落ちていたとか、電気の使いすぎとかなのかな・・・・・・」
そう思考した所で、僕は違和感を覚える。
・・・・・・あれ?
電気室から近い所に、1人、絶対にいたはずだ。
何で彼は、電気室に来ない・・・・・・いや、来る気配すら見せていないのだろうか。
――嫌な予感が全身を駆け巡る。
その予想が否定されることを願いながら僕は電気室を出て、向かいの体育館の扉を開ける。
そして、僕はそれを見た。
体育館の床。
うつぶせで倒れているチハヤくんの姿。
その肩は、真っ赤に染まっていた。




