54話 3章 ~日常編~ -12
食堂を出た僕達は最初に倉庫に向かい、バケツとライター、それにろうそくを手に入れた。
続いてそのバケツを身近な水辺ということで、プールから汲み上げ、僕達は屋上へと向かった。
すっかりと日が暮れて暗くなった屋上は、いつもよりも広く見えた。
ここから見える建物の光は少なくなっている。
正面に見えるのは場所的に保健室だろうか。ほとんど木で隠れているので光が漏れている程度しか見えないが、そこにいるとしたらジンくんだろうか。
それ以外の部屋は付いていないようだ。真下に美術室とカフェテリアがあるからそこにいるのかもしれないけれど、ここからは柵を越えて覗き込まないと分からない。
マシロくんはカフェテリアに、チハヤくんは体育館にいるだろうけれど、ナギサくんはどこにいるのか分からないな。
――そんなことが想像出来てしまうほど、残っている人間が少なくなっているということに寂しさを感じながら、僕は屋上の面々に目を向ける。
「花火ってなにげに初めてなんすよねー。幼い時にやってたかもしれないっすけど記憶にないっす」
「ならサスケに教えてあげようじゃないか。花火は尻に刺して火をつけるもんなんだよー」
「何かの昔話でありそうですね、そういうの」
わくわくとしている様子が声からも分かる。
僕もそれに釣られて笑顔になる。
「打ち上げ花火とかあったりする?」
「んー、少ないけど何個かあるっすね」
「それを最初に火をつけましょうよ」
「さんせー! 派手に行こうよー!」
ユウリくんは花火セットから打ち上げ花火を取り出し、少し離れたところに置く。
「火は怖いからコータよろしく!」
「え? 別にいいけど」
手渡されたライターを持って、僕は打ち上げ花火の元へ向かう。
「じゃあつけるよ。みんな準備はいい?」
しゃがみながら振り返ると、3人は頭上で丸マークを作る。
「行くよ。――3、2、1。点火!」
火をつけた後、急いでみんなの元まで駆け寄って、打ち上げ花火の行方を見守る。
ヒュルルルルー
・・・・・・ポン。
「・・・・・・これで終わりー?」
「みたいですね」
「なーんかしょぼいっすね」
「予想以上にね」
ぷっ、と僕達は顔を見合わせて笑った。
「そりゃあれくらいの大きさだったらこんなもんすよね」
「テレビで見たことがあるようなのを想像しちゃっていたよー」
「でも、ポン、って予想以上に小さくて・・・・・・ふふふふふ・・・・・・」
「だよね。最初としてはなんか様にならないよね」
星も月もない、不思議な宵闇の中。
僕達の笑い声が屋上に響き渡る。
殺し合いが二度も行われ、
仲のいい人が殺人者になっていて、
明日も何も見えない状況だけど、
でも。
今だけは。
楽しいであふれていた。
◆
数十分後。
花火を楽しんでいた僕達だったが、ついに最後の1種類になってしまった。
「最後はやっぱり線香花火でしょー」
取り出した細い花火をユウリくんは配る。
「一番長く火が付いていた人が勝ち! あ、妨害は禁止ねー」
「よし、乗るっすよ。ヒナタっち、負けた方が敗北者っすよ」
「望むところです」
「負けた方が敗北者ってそのままじゃ・・・・・・まあいいか」
残り少なくなったろうそくの近くに集まる。
ユウリくんが声を掛ける。
「いっせーのせで火に入れるよー。
――じゃあ、いっせーの、せ!」
線香花火長く付いていたら勝ち大会が始まった。
火が付いた後、息を止めて線香花火の先の赤の塊を静かに見守る。
「あー! 頑張れもう少しまだ待って待って! あー・・・・・・」
最初に落ちたのはサスケくんだった。
「あっはっは。我慢する心がないからですよあー」
ヒナタくんがどや顔をした直後に、彼の花火も落ちた。
残るは僕とユウリくんだ。
「意外だね、ユウリくんが残るとは」
「こういうのは結構残るんだよー、ユウリは」
じっとしていられないタイプだと思っていたが、我慢強い。
結局、勝ったのは――
「あー」
「やったー! ユウリの勝ちー!」
最後の最後まで残ったのはユウリくんだった。
「正直、ユウリっちが最初に落ちると思っていたっすよ」
「失礼ながら自分もです」
「ふっふっふー! 能ある鷹は爪を隠すのだよー!」
「ユウリくんはイノシシだけどね」
「確かにー」
笑い声が夜の屋上に響く。
それは僕らにとって大切な思い出になっていて。
友情を改めて確認できる出来事だった。
・・・・・・ツバメくん。
もし、この場に君がいたならば。
あんなことをしなかったかもしれないね。




