41話 2章 ~処刑~
サイ君の処刑の時。
ボクもこうなるんじゃないのかって思った。
あの時から、復讐の炎は消えなかったから。
ボクをこんな目に合わせたあいつらに復讐したい、と。
でも、同時に失望した。
お父さんとお母さんを生き返らせたい、なんて発想がなかった自分に。
落ち込んだ。
自分の大切なものよりも、憎いものの方を優先するなんて。
……でもきっと今なら分かる。
お父さんとお母さんが死んでから、ボクには友達がいなかった。
いや、作る心の余裕がなかったというのが正しいだろう。
更に学校にも逃げ場はなかった。
あいつの子供がいたから。
ひたすら心を殺して時が過ぎるのを待っていた。
だからだろう。
こんな所に連れてこられて。
ケンカする2人挟まれて。
無視をするわけにいかないから対応した。
ただそれだけだったのに。
いつの間にかその輪に、コータ君とユウリ君が加わって。
いつしか、多くの時間を共に過ごしていた。
そこでボクは満足してしまったのだろう。
プラス面の方は。
――だが、それはそれとして。
復讐心の方は少しも満たされなかった。
だから実行した。
それは後悔していない。
後悔はしていないが、名残惜しくはある。
もうちょっとだけ、みんなと過ごしてもよかったな、と。
『はい。では、鳥羽ツバメ様の処刑を始めましょう』
クウギョの声で現実に引き戻される。
ボクは、はりつけにされていた。
両手両足は拘束され、どこかの壁に固定されている。
首が多少動かせるので、状況は把握できる。
真下にある細長い金属。
同様のモノが首の左側にもある。だがこちらは固定されているようだ。
そして、カチカチと鳴り響いている音。
これが何か、想像は付いていた。
『鳥羽ツバメ様の処刑は――【人間時計】です』
人間時計。
ボクにピッタリだ。
首の横にあるのが長針でボクが短針、真下にあるのが秒針だろう。
位置的にこの時計の時刻は23時59分30秒だろう。
……現時点の時刻とまったくもって合っていない。
自分の感覚とズレているから、何より気持ち悪さが先行する。
『処刑を開始いたします』
クウギョの声と共に秒針が動き出す。
動き出して分かったが、カチカチという音は別の所から出ているようだ。
針の動きと合っていなくて、これもまた気持ちが悪い。
とことん不快にさせてくる。
秒針は、位置的には30秒程度でボクの所までくる。
迫りくるそれを見て、どういう処刑なのか理解した。
秒針の側面は、鋭い刃物のような断面をしていた。
このままくれば、ボクの首が切断されるであろう。
逃れる術はもうない。
ボクは諦めて目を閉じる。
近づいてくる針を見ながら恐怖を感じる必要はない。
いや、恐怖は感じているが、もう仕方ないのだ。
カチカチという音が耳に響く中、ボクは処刑の時を待つ。
残り10秒。
5秒。
1秒――
「……」
しかし。
ボクの首はその刃の感触を受けなかった。
一体何があったのか。
思わず目を開いてしまった。
――その瞬間。
運営の悪意を全身に感じた。
「……くそったれ」
針の位置は残り10秒の所にあった。
故障したわけではない。
この針――秒針ではない。
1秒で正しい距離を進まない。
カチカチという音とズレた動き方。
加えて、動く幅も、動く間隔も異なる。
内部に正しい時刻間隔を持つボクにとっては、何よりも苦痛だった。
そしてそれは、いつ自分の元に刃が押し当てられるのか、分からないのだ。
途端に恐怖が駆け巡る。
いやだいやだいやだ。
死にたくない死にたくない死にたくない。
脳内がそんな言葉でいっぱいになる。
後悔が押し寄せる。
受け入れたはずなのに、どうしても生への渇望を叫びたくなる。
「……っ」
それを抑えて。
ボクは唸るように声を放つ。
そうだ。
ボクはケンタロウ君を殺したんだ。
望んではいけないんだ。
……でも。
どうしても。
どうしても思ってしまう。
こんな願いくらいは、口に出させてくれ。
「過去に時を戻せたらよかったのにな」
次の瞬間。
首元にひんやりとした感触がした。




