32話 2章 ~日常編~ - 09
美術室、保健室と2回連続で目的を逃していた僕は、ぶらぶらと適当に1階まで下りていた。
(せっかくだし、さっきは断っちゃったけど、暇つぶしにサスケくんとヒナタくんとボール遊びでもするか)
そう思いついた僕は中庭へと向かった。
しかしながら2度あることは3度あるようで、目的を果たすことが出来なかった。
中庭にサスケくんとヒナタくんの姿はなかった。
代わりにいたのは、これまたそこにいるのが珍しい人だった。
「何をしているの、ジンくん?」
「猫泉コータか」
中庭の真ん中でしゃがみこんでいたので声を掛けると、彼は手のひらを開いてこちらに見せてきた。
その手の上にあったのは、カプセル型の何かを包み込んでいる包装だった。
「何それ?」
「ここに落ちていた。中身は保健室からなくなっていた睡眠薬だ」
「え? なんでそんなものがここに?」
「知らない。中庭に落ちているようなものじゃないのは間違いないな」
「あ、でもこれ、ジンくんが渡した人の内の誰かが落とした、とかじゃないの? サスケくんにも渡していたよね」
「それはないな」
即座に否定してきて彼は薬を裏返す。
「この薬の裏を見てみろ。何もないだろ?」
「うん。そうだけど……」
「私が渡した薬には全部誰に渡したのか分かるように文字を書いているはずだ。しかし何も書いていないということは、これは私に無断で持って行ったもので間違いない」
「成程」
ジンくんはそんな対策をしていたのか。
「しかし、ジンくん、これが中庭に落ちていることをよく見つけたね」
「ああ、窓から見てもしやと思ってな」
「窓? どこの?」
「保健室の窓からだ」
指をさした方向を見ると、確かに中庭に面した窓があった。
「保健室に窓があったなんて気が付かなかったよ」
「少し入り口から奥まったところにあるからな。保健室以外にも3階にある部屋だけは全部窓があるみたいだな」
「3階にある部屋というと……カフェテリアと美術室か」
そう言われてみると窓が複数あることに気が付く。
それらの部屋から中庭を見てみようと思ったことがなかったので、思わぬ発見だった。
「というか、それでもこんな小さな薬の包装を見つけたね」
「見つけた、というか、そうかもしれない、程度だったけれどな。私の目はモノクルを掛けている通りそんなによくないからな」
それでピンポイントで関係するものを見つけているのだからすごいものだ。
「私はもう少し中庭で落ちていないか探してみる。他にも落ちていたら、仮に窓から投げ捨てていたり、屋上で落とした可能性も出てくるからな。そこから誰が持って行ったのかも分かるかもしれない」
「うん、わかった。あまり無理しないでね」
手をひらひらとしながら地面に目を移したジンくんの背中を見た後、僕は中庭から建物の中へと戻った。




