27話 2章 ~日常編~ - 04
その後、午前中はぶらぶらと適当なところを歩いて回っていた。
気分転換をしたかったのだ。
僕の頭の中には、朝、ユウリくんと食堂でのやり取りが残り続けていた。
自分が疑われるなんて思いもしなかったので、予想以上にショックを受けているのかもしれない。
ぼーっとしながら当てもなく歩いているとカフェテリアの扉に手をかけていた。
「っ! あ、なんだコータさんか」
入った途端、マシロくんが飛び上がる。流石ウサギの干支の持ち主だ。
「そんなに驚いてどうしたの?」
「いや、チハヤさんが来たのかな、って思って」
「あー」
確かにチハヤくんはカフェテリアには時折行くかも、って言っていたからな。
「あの後来たの?」
「来ていないからビビっているんだよね」
マシロくんが深くため息を吐く。
「でも、正直言うと、チハヤさんってそんな悪い人ではないと思うんだよね」
「悪い人じゃない?」
「うん。これまで話して、最初の印象より乱暴なことをするような人じゃないと思ったんだよね。だから昨日、あんなことを言ったのがびっくりしているんだけど……」
驚いた。
マシロくんはチハヤくんの表に出していない面も理解しているのか。
といっても、僕も昨日のやり取りで分かったことだけど。
でも、チハヤくんとの約束でそれは表立って賛同は出来ないので、とぼけることにした。
「そうなのかな。でもさっき怖がっていたんじゃないの?」
「あ、あれは怖がったわけじゃなくて……その、心構えがまだできていないというか、どういう態度で接すればいいのか、迷っていた感じで……」
自分の人差し指を合わせながら言いにくそうにそう告げるマシロくん。
その様子にこれ以上追及するのはちょっと気が引けたので、話題を少し逸らすことにした。
「ねえマシロくん。この中にいる黒幕って誰のことだと思う?」
「え!? 黒幕!?」
ビクリとマシロくんは肩を跳ね上げさせる。
「そ、そんなの分からないよ……それに信じたくないよ。ぼく達の中に黒幕がいるなんて……」
「そうだよね」
「だからぼくはやめたんだよ。誰かを疑うのを」
「え?」
にっこりとマシロくんは微笑んだ。
「ぼくが今出来るのは、おいしい飲み物を提供すること。それが例え黒幕であっても、そうでなくても関係ないんだよ」
「そっか」
それも一つの選択肢だろう。
誰かを疑って精神をすり減らすのならば、誰も疑わないで心を保つ。
「というわけなので、何か飲み物を注文してよ、コータさん。そしておしゃべりでもしようよ」
笑顔でそういう彼に、僕も頬を緩ませる。
「そうだね。今日はコーヒーを飲んでみようかな」
「オッケー。じゃあ比較的飲みやすいコーヒーを入れるね」
その後、昼食前まで穏やかにマシロくんと歓談した。




