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22話 1章 ~処刑~

(……なんだ、ここは)


 気が付いたら俺は見知らぬ場所に連れてかれていた。

 いつの間にか縛られていた椅子もどこかにいっていた。


 四方を壁に囲われた場所。

 一体ここで何をするのか。


(……何をするって、そりゃ、処刑に決まっているわな)


 俺は殺人を犯した。

 牛場を殺したんだ。


 でも、もうどうだっていい。

 俺は、俺の願いを叶えられなかったのだから。



 ――俺の記憶の中に、父親は存在しない。

 物心つく頃からもう母さん一人だった。


 母さんは俺を育てる為に、文字通り身を粉にして働いていた。

 しかも、忙しい中で、俺との交流も頻繁にしてくれた。

 文字通り、よい母親であった。


 だけど、俺が高校生になった時だった。

 母さんは突然、病気になった。


 働きすぎて免疫が低くなっていたのだろう。

 それでも、俺の為に働こうとしていた。


 だから俺は働き始めた。

 母さんは「高校だけは卒業しなさい」って口を酸っぱくしながら言っていたから、高校もきちんと通っていた。


 だが、事態は好転しなかった。

 母さんは色んな病気を併発させ、文字通り生きているのがやっとの状態になっており、手術が必要になっていた。


 手術には金が掛かる。

 しかも、日本で出来ないからアルバイトだけでは到底賄いきれないほどの膨大な金額が掛かる。


 そこで不幸だったのか幸いだったのか、バイト先の先輩が金を稼げる手段を知っていると、裏カジノの存在を教えてくれた。


 そこで俺はとにかく勝った。

 あまりにも勝ちすぎて命を狙われることもあったが、逆にそれを利用してどんどん稼げる金額を増やしていった。


(俺は金を稼ぐのがうまいなあ)


 完全にノリに乗っていた。

 そして裏の世界で有名になったのとほぼ同時に、母さんの手術代を稼ぐことが出来た。


 俺はすぐさま支払いを行い、母さんは手術を受けられることになった。


 これで母さんは元気になる。

 多少は金も残しているし、これからは楽にさせられる。


 だが、手術は失敗した。


 治せるはずだった。

 だが、医者がミスをした。


 そのせいで母さんは死んだ。


 払ったよりも莫大な慰謝料が俺に支払われた。




 ああ、本当に。

 俺は金を稼ぐのがうまいなあ。



 ……くそったれ。



 こんなくそったれな世界、もう未練なんかない。


「ここが何だか知らないが、さっさとやるべきことはやってくれ」


『はい。ではお望み通り、馬目サイ様の処刑を始めましょう』


 クウギョの声がどこからか聞こえた。 


『馬目サイ様の処刑は――【生死ルーレット】です』


 生死ルーレット?

 ルーレットは、まあ俺らしいな。


 と、そこで目の前の壁の一つが上に移動していく。

 その先にあったのは、2つの扉。


『ここに【黒の扉】と【白の扉】があります。馬目サイ様にはどちらかの扉を選んでいただきます』

「うん? 選んだらどうなるんだ?」

『これをご覧ください』


 上方からモニタが出てくる。

 そこに映し出されていたのは、ルーレットだった。

 しかし普通のと異なるのは、中心に黒と白の2つの穴が空いている、というものだった。


『ここに映し出されている通り、馬目サイ様がいらっしゃるのは大きなルーレットになります。この扉の先にある部屋のどちらかに、ルーレットの球が落ちます』

「なんだ? 落ちない方に入れば助かる、ってことか?」


 そんなわけないと思いながら聞いたのだが


『その通りでございます』

「……え?」


 予想外の答えだった。


『球が落ちない方の部屋を選択しましたら、当然、球に押し潰されるということは無くなりますね』

「マジか」


 2択を当てる。

 そんなこと、俺の『能力』を使用すれば造作もないことだ。


 既に答えも分かっている。


『そしてもう一つお伝えすることがあります』


 俺が落ちない方の扉に手を掛けたのと同時だった。


「なんだよ?」

『馬目サイ様が入らなかった扉の方には、別の方が入ることになっております』

「別の方?」


 あいつらの誰かなのか。

 そもそも、なんで俺の他に人がいるんだ。


『この方です』


 モニターに人物が映し出される。


「っ!」


 なんでここにいるんだ。


 あれは本物か?

 本物であるはずがない。


 ……いや。

 この非現実的な空間ならあり得るか。


 成程。

 俺の処刑としては相応しい。


 俺に選択しろということか。

 2択を。


「……ふざけるな」



 俺は『黒の扉』を選んだ。



「クロ、か」


 犯人である俺には相応しい部屋だ。


『さて、選択が終わりました。これより、ルーレットに球が放たれます』


 ゴロゴロゴロ、と振動と共に音が鳴る。

 あと数秒で球が落ちて来るだろう。


「……出来るわけない」


 例え偽物だったとしても。

 俺に選べるわけがないだろうが。


 もう一度。

 俺の手で、殺すという選択肢を。



「母さん」



 空いている上部の空間に向かって呟く。

 その言葉が隣の部屋に届いているかどうか。

 本当に母さんがいるのかどうか。



 そんなことを確かめる間もなく。

 俺の視界が暗闇に包まれた。


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