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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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6.そうだ冒険に行こう 魔術2

『 <よいこのまほうーななさいじ 3>


よいこのみんな げんきー?


きょうも まほうを つかうよ。


あぶないから おとなと いっしょね。 



よし! やってみよー。



ひ ぞくせいの みんな!


かっこいい ひのたまを つくろう。


はじめるよー! 



まりょくを ゆびさきにあつめて


そのまま ゆびをうごかして まるをかくよ!


くるっとね。


そして ”ひの かごを” と となえてね。


どう? できた? 』



にっと歯茎を剥き出しにしている羊が嬉しそうに、親指を立てている。


「ふんふん、ゴリラの次は羊なのね」


とにかく、絵本の羊を参考にして、まずは火の玉の魔法から。

指先に魔力を集めて、そのまま円を描く。


「”火の加護を”」


刹那に火の玉が現れた。


「まあ、火の玉よ!」


初魔法、初生活魔法である。感激で顔が熱ってきた。


「お嬢さま、おめでとうございますっ!」


「ええ、でも、絵本の火の玉とは大きさが違うけど、大人だとこんなものかしら?」


「そうですね‥‥‥あっ、ここ見てくださいっ!」


テリーは絵本の羊を指し示した。


「羊は指が二本です。二本と五本の差なのかもしれませんっ」とテリーがうんうんと頷っている。


それもそうかと、ページをパラパラと捲り、どんどん進めていく。


「はい、七歳の絵本は終了」


魔法の基本、生活魔法はここで一区切り。ここからは魔術陣を用いた魔術となる。



まずは魔術初級編に中級編、そして上級編。魔術陣を使って詠唱も長くなる。それぞれの魔術陣と詠唱文を次々と記憶していく。


「相変わらず、えげつない速さですっ!」


「ふふっ、記憶は得意分野よ」


「お嬢さまの瞬間記憶、恐るべしですっ」


一度見ただけで映像のように記憶することができるのでお茶の子さいさいなのだ。



キリの良いところで少し休憩することにした。テリーにお茶の用意をしてもらっているとコンコンと扉を叩く音がする。


「お嬢様、先代国王陛下よりの書状を拝受いたしました」


入室すると家令のダニエルが書状を載せた豪華な銀の装飾トレーを恭しく差し出す。


(お父様もお兄様方もいらっしゃらないから、直接の受け取りが私なのね。それにしても公爵家にこのような意匠で美しいトレーと対のペーパーナイフがあるなんて知らなかったわ)


まじましと匠の技に見惚れているとトレーが小刻みに揺らぐ。どうやら初老でペンより重たいものを持つことがないダニエルには重すぎたようだ。


可哀想なのですぐに礼を言って受け取り、にこやかに退室するダニエルの後ろ姿を見送ってから、テリーにも下がってもらう。箝口令の敷かれている王宮の祝福についての書状と当たりを付けての事である。



早速、返信不要と伝えられた書状の封を開けた。


『 リリアナへ


王宮学者に命じて賢王サリエルについて調べさせた。

王宮にあるすべての伝承や書物、肖像画を検証させた結果、

王は常に色の違う十二の宝石が嵌め込まれた腕輪をしていたそうだ。


我らが見た肖像画とは違うな 』



内密の書状は受取人が封を開け、手を離すと同時に火が付くようになっている。二度読み返して書状から手を離した。


床に着く前に書状が燃え尽きるのを見届けながら思考を巡らす。


「常に十二宝石の腕輪。肖像画には腕輪はなく、十二宝石の本」


いつもの癖で知らず知らずの内に顎に手をやり、左右へウロウロする。


「腕輪は本に、本は腕輪に。大伯父様は‥‥形を変化させる事ができるのではないか、とおっしゃっているのね」


無駄にごつごつしているし、留金は外すことも出来ないしで、すっかり置きぱなしの賢者の本を「よいしょ」と抱え上げて書斎机に置いた。


変わらずの豪華な装飾装丁で、幾何学模様に嵌め込まれ十二宝石に金の留金具が二つがっちりとかかっている。



少し考えてから本の宝石を一つ一つ押していく。ひょっとして、宝石の一つを押したら腕輪に変わるかもと期待したが、そんなに甘くはないようである。


ふむ、と横に寝かせてある本を縦に立ててみたり、後に数歩下がって全体的に眺めたりしていると本の表紙が一部汚ていることに気がついた。なんともなしに指でキュッキュッと擦る。


汚れが全く落ちないので更に力を入れて指で擦ると文字のようなもの見えくる。


「あら? これは古代文字かしら? 解読ー‥‥っ?!」


『解読には辞書が必要ね』と言い終わらないうちにカシャリと留金が外れ、白紙のページがひとりでにパラパラと捲られ始めた。


そして、開かれたそのページをこわごわと覗き込むと、そこには精巧な複合魔術陣があり、心なしか青く浮かび上がっているように見える。


「‥‥‥っ?!」


突然の事で動けないでいると、まるでランプの光が消えるように魔術陣が消えてしまった。そして、パタンと本が閉じられ、留め金からも音がする。


「これは‥‥『解読』と口にして魔術陣が現れたように思えるわ。ひょっとして、解読の魔術陣だったのかしら?」


わくわくする気持ちを抑えながら、今しがた記憶した解読の魔術陣らしきもので、先ほどの古代文字を解読できるか試してみる。


詠唱文が記述されていなかったので、たった一言。


「『解読』」


すると、表紙の古代文字の羅列を『魔法・・陣叢書』と読む事ができた。


驚きのあまり、少し咽せてしまう。


「ぐふぅ、ぐふぅ、古い物言いだけど、『魔術陣全集』みたいなものかしら? 全集とあるぐらいだもの、賢王サリエルが魔術陣を集めて編集したものだとしたら、途轍もなく貴重な本だわ」


試しに今まで読むことができなかった挿絵に綺麗な花や草が描かれている古代言語の本を手に取る。


「『解読』」


『薬草茶手引書、高熱には一月乾かしたワク、ブハの葉、ザサの根を‥‥』と難なく読む事ができた。


「詠唱も必要ないなんて、凄いわ!」


興奮と高揚感で胸がどきどきと躍るようだ。

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