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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第二章 新天地

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54.辺境伯を探せ

今夜の一品は柔らかジューシー鹿肉炭火焼きだ。どうしても帰りが遅くなる日が続き、食事班が用意する夕食に一品足すという感じに落ち着いた。


鹿肉にサッと塩と食事班秘伝のスパイス。そして、焚き火の轟々の火力で丁寧に焼き上げて、外はパリ、中はジューシーに。そして仕上げに新鮮な香草を添えて出来上がりだ。食欲を刺激する香ばしい匂いが辺りに漂う。



それにしてもである。足早に通り過ぎた辺境伯直下の高官とゴーランド団長の周りには重苦しい雰囲気が漂っている。


張り詰めた二人の顔と鋭い眼光が事態の悪さを物語っていて、何か深刻な事態が発生したのは間違いないだろう。


この時期に国防を担うウィルソン辺境伯領に何かあれば、他国に隙を見せることに繋がり、侵略する機を窺っている国には絶好の機会になる。


一体何が起きているのか。そこで秘技、地獄耳の出番である。

調理はテリーとクリスに任せて、集中してゴーランド団長周辺の会話を拾った。


流石に騒がしい集団の中では困難な時もあり、密かに追跡や忍び寄りを繰り返していたら、テリーに『すとーかー』という新しい言葉を教えてもらった。


そのすとーかーをして、ぼんやりと大筋が見えてきた。

『辺境伯がまだ戻っていない。撤去と救助要員』が鍵となりそうだ。



調理を終えたテリーとクリスに目で合図して、『遮音』の天幕に戻ってから伝える。


「先程、水を汲みの際に辺境伯の愛馬が厩舎にいるのを目にしています」


「むむ、砦から出たご様子がないのに、閣下は戻られていない。それはズバリ、隠し通路か地下通路からどこかに行かれて戻られていない、に違いありませんっ」


自信ありげに一人何度も頷くテリーである。


「隠し通路か地下通路を辿る事が手始めですね」


テリーの鼻息荒い名密偵ぶりをするりと受け流して、冷静に判断を下すクリスだ。


「そうね。テリーとクリスはその通路の調査をお願いね」

「「了解です」」


前にテリーが言っていた。使用している隠し通路はどんなに隠していても僅かに残る不自然さから見つけるのはそう難しくないそうだ。


「二人とも無理はしないでね」

「はいっ! お嬢さまの外套があれば百万力ですので、大丈夫ですっ」


二人は外套のフードを被り、姿も気配も無くして静かに消え去った。


「さてと、私は建物の地下を探しましょうか」


探知と魔眼の重ね技の出番である。目を閉じて、感覚を研ぎ澄ませる。奥へ。そしてそのさらに奥へ。


軽い頭痛からこめかみのあたりほぐしているとテリーとクリスが戻ってきた。


「戻りましたっ、地下が騒がしく、複数の特殊部隊員の動線から地下への出入口らしき場所を見つけましたっ」


「では、その地下出入口までの案内をお願いね。多分二人とも吃驚するわよ」


首を傾げる二人に意味ありげに片目を瞑った。




————チャポン


冷やりとした風がどこからか流れる。


魔眼で見透した通り、砦の居館の下には巨大な地下空間。長期的な籠城を想定した地下貯水湖が広がっていた。


時が止まったかのような荒々しい岩壁と巨大な柱。それでいて、飾り柱と魔道ランプが整然と立ち並ぶ様子はどこか幻想的で荘厳さも感じられる。


石がゴロゴロと激しく転がり落ちる音で現実に引き戻された。


魔の森がある方向、西へと真っ直ぐに伸び、水面より少し高い位置にある石の道。兵士や魔術師達が忙しそうにその石の道を足早で行き来し、それぞれが黙々とすべき事をしている。


その道を分断するかのように大規模崩落が起こったようだ。きっと、先ほどの音は一欠片の落石の音に違いない。


危険は厭わず、一刻を惜しむかのような速さで瓦礫や落石の撤去をこなす様子から、辺境伯はその先にいることが窺い知れる。


状況は思っていたより深刻だ。まずは魔眼で透視していく。崩落に巻き込まれている事も想定しながら丁寧に慎重に。


一通り終えて、ふぅと息を吐く。気づかないうちに緊張していたようで握り締めて強張った手を軽くほぐす。


(『転移』)


「崩落現場の先に転移したわ。遮音もしたから話しても大丈夫よ」

光玉を複数個飛ばしながら、二人に現状を端的に伝えた。


「と、突然でびっくりしましたっ!」


「崩落があったなんて気が付きませんでした」


「そうね。魔の森の深奥にいたし、魔獣討伐の音と振動に重なってしまったのかもしれないわ」


会話をしながらもテリーとクリスの目線が現状把握に忙しい。何せ崩落現場の近くだ、四方を念入りに確認している。


「『強固定』」「『強固定』」「『強固定』」「『強固定』」


これ以上崩落することがないよう、上下左右を固定した。ついでに水の流れが堰き止められはいるものの、泥水で湿っぽいので『乾燥』も。


「お嬢様、周辺に人はいないようです」

「ええ、そのようね。すぐに探すわ」


「『探索』」


列柱の間の石道を通り、奥の広がった空間、その下‥‥。


「‥‥見つけたわ。あまり状態が良くないから急ぎましょう。翼があるネズミのような小型の闇魔獣がいるから気をつけてね」


ネズミが嫌いなテリーが嫌そうに眉を顰めながら、剣を抜く。


「転移するわよ」

「「はいっ」」

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