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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第二章 新天地

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51.魔獣討伐遠征1 結界塔と昼食

後援部隊の帆馬車に同乗者が次々と乗り込む。最初は冒険者パーティ『薬草』の眩しいくらい若々しく元気一杯の三人組だ。


次は後援部隊の兵士四人。


「よう、ここ、座らせてもらうぜ」


干し草などの飼料が積まれている帆馬車にガタイの大きな兵士達が次々と乗り込み、一気に狭くなった。


兵士でも年齢や怪我が元で後援部隊に配属されることが多いと聞く。年齢層が高い様子を見るに、彼らもそのような経緯で配属されたのだろう。


何はともあれ、この七人と共に半月の旅程でガブリストーン砦へ向かう。



帆馬車が動き出し、しばらくすると後援部隊の兵士達は銘々腕を組んで目を閉じていたり、ぐうぐう大イビキをかく者も出てきた。


「ロック砦までの長旅に加えて、昨日は飲み会があったそうです」

兵士達を代弁するかのようにクリスが言い添えた。


時々、ぐわっ、と大きないびきに驚かされながらの帆馬車の旅が始まった。


暇そうな冒険者『薬草』の三人組とのんびりと景色を眺めながら、ガサガサと袋から間食を出して食べたり、取り留めのない話に花を咲かせる。


三人組は辺境伯領南部の小さな町の出身で、ダグとユルド、それにアイリは幼なじみだとニコニコの笑顔でいう。


「俺ら継ぐ家もないし、冒険者になったんだ。森や野っ原で遊んでたから薬草に詳しくてよ、知っての通り、薬草採集を主にしている」


「でも薬草採取一本だと、冒険者ランクって、なかなか上がらないのよね〜」


「まあ、夢は大きくブラックストーンに小さな薬屋だっ!」


方やキラキラと希望と情熱を胸に、夢に向かって青春を謳歌する冒険者達、方や修羅場を踏んできました風のどしりと貫禄のある冒険者達。しかも一人酒が似合いそうである。


そう、後者はテリーとクリス。同じ年頃なのに目も当てられない差である。少し同情していたら、はたと気が付いた。


(もしかして、私もっ?!)


密かに胸が締め付けられる思いをしたが、

長い帆馬車の旅、急ぐでもなく南部の村の暮らしなどを色々聞かせてもらった。



開けた原野の一角で何度目かの休憩の後に今宵の野営地に着いた。ここを拠点に小隊の配置や野営の準備で荷馬車の荷を下ろしたりと忙しい。


鍛え上げられた身体でキビキビと働く兵士達。食事班、補給班、例え目立たなくとも、ひたむきに仕事に向き合う姿は見ていて清々しい。


さて、今日の野営地は第一拠点、結界塔の横である。


結界塔の外観は石を組み上げただけの実に簡素な二階建ての塔だった。歴史は古く何百年にも亘ってこの地を守ってきたそうだ。


何でも、魔の森と辺境伯領との境に沿い、魔獣に特化された結界が一直線に一定の間隔で設置されているという。



『えー、この結界塔は魔力を登録した者しか入れない仕組みになってます。一階は非常時の備えで携帯食や備品。二階は石板があり、結界魔術陣が彫り込まれています』


『では、石板を見に行きましょう。二階への階段はこちらです』


『えー、こちらがその石板です。魔石で魔術陣を常に発動させている状態ですので、このように青く結界魔術陣が光っています』


『えー、年二回の定期点検で重要なのは三つ。一つは魔術陣の発動状態、二つ目は魔石の残存魔力量、そして三つ目は正しく機能しているかの検証です』


魔術師副長のサイモンさんによると具体的には魔術陣の調整と修復、魔石の追加と交換。最後は上級魔術師によって結界の歪みや揺らぎないかを検証するそうだ。


たまたま結界塔の裏が冒険者達に振り分けられた野営地だったので、盗み聞きではなく、たまたま聴力強化で耳にした? だけである。


改めて眺めると結界塔から空に向かって真っ直ぐに結界が立ち上がっているのが見える。揺らぎだったり、薄く見えるところが綻びや異常なのだろう。


さあ、明日から魔獣討伐が始まる。蓑虫の蓑のような寝床にもぞもぞと入り込むと眠りがすぐにやってきた。




◇◇◇




早朝に魔の森へ向かう頼もしい魔獣討伐部隊の背を見送る。


整備された砦付近とは違い、ここ一帯の魔の森は枝が少しでも光を求めるように複雑に絡み合っている。


人が踏み入れてはならない領域だと主張するように、巨木のうねる根がその場を支配するかのように奔り、苔に喰われたような岩がゴロゴロと一面に転がっている。


しかし、兵士達に負けてはいられない。『銀の杖』も辺境伯軍から依頼されている薬草の採取に取り掛かる。


「お嬢さま、北連合国の原生林と雰囲気が似てますねっ」

「また苔で滑らないようにして下さい。心臓に悪いですから」


「クリス、転んだのは一回だけよ」

「派手に転んだのは、です」


「ふふっ、気を付けるわ。では、行きましょう」

「「はいっ!」」


足場の悪い苔むす岩を駆け上がり、岩々を高い跳躍力で飛び越えていく。

直ぐに深い森の匂いに包まれた。



日が真上に昇る頃にはちゃっかり『銀の杖』分も含めて十分な薬草の採取が終わった。ついでに三人の新人兵士の回収もである。


二人が体力不足やらで遅れを取り、一人が迷子。


クリスは三人の上官が捜索を開始する前にと急ぎ連絡に向かった。また迷子になっても困るので、一人元気な新人くんはここで待機だ。



「おじょ、シルバー、さん。キノコも焼けましたっ」

「えっ、それ毒キノコ」


全く油断も隙もないのである。テリーがいつの間に焼いていたキノコをポイッとする。


そう、クリスが戻る前にと魔の森近くでテリーと昼食の準備をしている最中だ。


その辺で襲い掛かってきた魔獣を仕留めて、こんがりと焼いている。これを香草と一緒にパンに挟んで出来上がりだ。


ジュージュージュー

ジャ、ジャ、ジュージュージュー


スパイスの香ばしい匂いが立ち上がり食欲をそそる。


見かけによらず大食漢のクリスの為に黙々と焼いていると冒険者パーティ『薬草』も戻ってきた。


「三人とも良かったら食べる?」


「えっ、いいの? やったー!」

「「ゴチになりやすっ!」」


がつがつの食いぷりに驚きながらも減ったクリスの分を焼いていると、今度は魔獣討伐を終えた一小隊が戻ってきた。


貰えると信じて疑わないキラキラ瞳の兵士達が、くぅーとお腹を鳴らせて物欲しそうにしている姿に負けてしまったのである‥‥‥。


ジュージュージュー

ジャ、ジャ、ジュージュージュー


次から次へと焼き、テリーがパンに挟んで手渡して行く。終いには迷子の新人も借り受けての忙しさだ。


せっせと焼いていたので気付くのが遅れたが、いつの間にか戻っていたクリスがぽかんとした顔で突っ立っていた。


「レッド、次の小隊が戻る前に逃げるわよ!」

「はいっ!」


「ク、ブルーも手伝って」

「はい!」


野営拠点では食事班が昼食の準備をしているはずである。阿吽の呼吸で脱兎の如く逃げだした。

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