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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第二章 新天地

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50.寄り道でロック砦 遠征参加要請

辺境伯領一の鍛治職人にテリーとクリスの剣を依頼して数日が過ぎた。他の依頼をこなしながらなので、一月はかかるそうだ。


もう一月はこのロック砦で過ごす事になり、午前中は柔軟やら剣の鍛錬。午後からは薬草採取の依頼をこなす。ついでに『銀の杖』回復薬の調合に必要な薬草を取り揃える事ができるので一石二鳥である。



今朝もいつもの日課、イリシオンの家の裏庭で柔軟をする。


解放された元神獣の白銀しろがねは閉じ込められていた反動か、長らくお出かけ中。きっとこの水色に澄んだ秋の空をどこまでも高く駆けていることだろう。


魔馬達は食べ過ぎのぽっこりお腹で、陽だまりにゴロリと転がり、ぶひひぃーと気持ちよさそうに日光浴。


そして、イリシオンは木の間に手織りの布を吊り下げて作った寝床で、読みかけの本を胸にゆらゆらと揺られてうたた寝をしている。


いつもの穏やかで気が抜ける朝である。



そんな穏やかでのんびりしていた日々に暗雲が立ち込めた。


「お嬢様、大変です」


ちょっと丸ちゃん食堂までと昼食の果実パンを買いに走ったクリスが、手ぶらで戻ってきたのは正午をかなり過ぎた頃だった。テリーとは違い、クリスの冷静な「大変」は本当に大変なのである。続きを促すように頷いた。


「ウィルソン辺境伯閣下がロック砦に到着あそばされました」

「ぶふぅ——っ!」


ぶふぅと飲んでいたお茶を吹き出したのはテリーである。


クリスは兵士の慌ただしい様子を見て、静かに動向を探っていたそうだ。辺境伯が魔獣討伐団を率いてロック砦に到着し、領主館に入ったところまで見届けて戻って来たと言う。


これは確かに大変である。



そして次は、午後に冒険者ギルドへの薬草納品から戻って来たテリーの一声である。


「お嬢さま、大変ですっ!」


出掛けに大人気で売り切れ御免の『ギルド長手作りクッキー』の話をしていたので、ひょっとして買えたのだろうか。


「クッキーが手に入ったの?」


「あっ、はい‥‥いえ、それより大変ですっ! どういう訳だかウィルソン辺境伯閣下直々の魔獣討伐遠征の参加要請ですっ」


「「‥‥‥っ?!」」


それは大変である。何が面白くて避けている辺境伯御一行と魔獣討伐をしないといけないのだろうか。


「‥‥ランクの高い冒険者なら強制参加もあり得るとは聞いていたけど、ランクの低い私達がなぜ参加しないといけないのかしら?」


「なんでも今回の遠征ではCランク以上の薬草の知識に長けた冒険者パーティー、『薬草』と『銀の杖』に依頼が出されたそうですっ」


「冒険者パーティー『薬草』‥‥」

なんの捻りもないパーティー名で驚いてしまった。


すぐに気持ちを切り替えて、不参加の計画を練る。

「考えつくのは、病気、怪我、不在、かい‥‥」


解散と思い付いてしまったが、『銀の杖』の裏リーダー、テリーが泣いてしまうかも知れない。


何にせよ冒険者ギルドを通しての依頼なので、ウィルソン辺境伯直々の指名依頼を蹴るとギルド長トットの覚えが悪くなる。


朝早くから桃色の花柄前掛け姿のトットが、筋骨の大柄な体を丸めて冒険者達の為にとせっせとクッキーを焼く。あのトットの眩しい笑顔を思い出すとダメだった‥‥参加の一択である。


「‥‥仕方ないわ。ギルド長トットの顔を立ててあげないとね」


テリーとクリスは返事の代わりにふぅーと深いため息を吐いた。


売り切れ御免のギルド長手作りクッキーが買えたりと、いろいろな意味で大変な一日だった。




◇◇◇




東の空がもう青みがかっている。


もうすぐ魔の森最前線、中部ロック砦より真北のガブリストーン砦へと出立だ。


定期的に行われる秋の魔獣討伐遠征。ウィルソン辺境伯が総指揮官で、魔獣討伐団長ゴーランドと副団長が副指揮官だ。


派遣兵士と交代要員、後援部隊も合わせて、中西部城塞都市ブラックストーンから到着した千人の大隊がロック砦で北と南に二つの中隊へと二分する。


冒険者パーティー『銀の杖』は冒険者ギルドで登録した名、テリーがレッド、クリスがブルー、私がシルバーとして、北への中隊と共に真北のガブリストーン砦へと向かう。


「魔の森の中部最前線がロック砦、真北はガブリストーン砦、真南はムーンストーン砦。中西部城塞都市ブラックストーンも合わせるとストーンが付く地名が多いですっ」


せっせと後援部隊の帆馬車に荷物を積みながらテリーが言った。


「ふふっ、でも覚えやすくていいわ」


ロック砦の広場では兵士数百人が一糸乱れぬ立ち姿で凛々しい顔を並べていると聞いた。時折聞こえる兵士達の重装備からからくる揃った金属音や号令なども聞こえてくるが、後援部隊は裏で黙々と最後の荷物積みである。


準備が整い帆馬車に乗り込むと、後ではテリーとクリスが高官が乗る立派な馬車と帆馬車を見比べて微妙な顔をしている。未来の辺境伯夫人でも何でも、歩兵も多い中を帆馬車に乗れるだけでも御の字なのである。


確かに父オーランドが帆馬車に乗っている事を知ったら倒れてしまうかも知れない。


「ふふっ、二人とも微妙な顔をしているわよ。気楽に冒険できるし、内部調査? もできるしで都合が良いわ。ほら『薬草』と後援部隊がやって来たわよ」


「「はい(っ)!」


冒険者パーティー『薬草』も三人組で、後には大きな袋を背負っている。


「こんにちは、私達は『薬草』です! よろしくお願いします!」

「俺達は同じ村の出身で幼馴染なんだ」

「よろしくっ!」


歳は同じくらいなのに眩しいくらい若々しく元気一杯だ。それに引き換え、こちらは老練な雰囲気の怪しい三人組である。


「こんにちはっ、こちらこそよろしくっ!」


代表してテリーが頑張って声を上げた。

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