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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第二章 新天地

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45.俺は魔獣討伐団長ゴーランドだ

俺は辺境伯軍第二軍団長アーサー・ゴーランド。

第二軍団は魔獣討伐に特化した軍団で『魔獣討伐団』と呼ばれる事が多いがな。


魔獣が住まう魔の森の最前線、中西部城塞都市ブラックストーン、並びにロック砦、北はガブリストーン砦、南はムーンストーン砦。


要は広範囲で魔獣討伐だけでなく、魔獣の被害を軽減するための対策をとるのが魔獣討伐団。俺がその団長だ。



通常は中西部城塞都市ブラックストーンの本部にいるが、春と秋の討伐遠征の期間は別だ。年の総括とも言える秋の大規模な討伐遠征の際には、事前にロック砦の駐屯地で指揮と執務にあたる。


毎朝、俺の執務机には見るだけでうんざりを通り過ぎて、ゲンナリする山のような書類が積み重なっている。ため息を吐きつつ、まずは一枚一枚に目を通して重要であるものと、そうでないものとに振り分けていく。


その一枚が辺境伯閣下の婚約者でもあるディフラン公爵家長女リリアナ嬢、並びに公爵家騎士二名、文官一名がウィルソン辺境伯領に入領後、消息不明とある。


「たくっ、領都の奴ら、何やってんだか」


ポイッとそうでないものに振り分けた。



次の一枚はロック砦の冒険者ギルド長から魔獣の活性化についての相談だ。部下任せにせず、すぐに行くべきだと判断する。


何せ、魔獣討伐団の仕事は多岐に渡たり、冒険者ギルドとの足並み合わせもその内の一つだ。


争いを避けるために魔獣討伐に関しての分担やガイドラインだけでなく、協議や情報交換も積極的に行なっている。何せ非常時には互いに背を預ける事になるのだからな。


冒険者ギルド長は俺の幼馴染で、いわゆる、気心の知れた仲だ。アイツは一風変わっているが良い奴だ。


「おい、冒険者ギルドに行くぞ」


「あっ、ちょ、せめて服変えてくださいよ〜。皆が萎縮して困るって、ギルド長に言われたばかりじゃないすかっ」


「ああ、まあ、そうだな」


さっと軍服を脱いで、適当な動きやすい服に着替えた。いつものように若いが有能である部下のオラシオも連れていく。コイツは人当たりが良く、交渉事にも慣れているから何かと役に立つ。



夏の光を容赦なく浴びながら、冒険者ギルドへ向かった。ギルド内は相変わらず、むっとするほど暑苦しい奴らで一杯だ。


げんなりしながら周りを見渡すと一発でギルド長を見つける事ができた。何しろ目立つ花柄を身につけているから事務員に声をかけるまでもない。


どうやら、奥で年若い冒険者らと話し込んでいるようだ。少し待つか。汗を拭いながら、なんともなしにやり取りを眺めていると、一人が外套のフードをずらし、輝くばかりの銀髪を披露したのだ。


「‥‥‥っ!!」


直ぐに深くフードを被り直したのだが、確かに銀髪だった。隣のオラシオに顎をしゃくり、聞いてみる。


「オラシオ。あの若者の髪色を見たか?」


「えっ、若者? その手前にいる豊満なお姉さんは見てましたけど?」


内心で舌打ちする。どこ見ているだ、こいつは。


「首巻きで顔を覆っていて、外套のフードを深く被っているあの三人組だ」


「あー、今流行りの覆面冒険者っすねー‥‥」


なんでも市井の流行本『一人冒険旅行記』の冒険者が覆面らしい。格好が良いと若者がこぞって真似をしているとかしないとか。



そんなことよりも銀髪だ。銀髪と言えば、王族か高位貴族しかいないじゃないか。いや、他国の線もあるか。あの行方不明の公爵令嬢も輝くばかりの銀髪の持ち主だと聞くぞ。


いや待て、計算が合わないか。あの魔術伝書には入領が五日前だと書いてあった。東の関門からだと、このロック砦まで馬で半月以上はかかる。


うむ、令嬢がここにいるはずはない。だが気になって目が離せないのだ。


何しろ、俺は勘を大事にしている。今までの討伐も含めて何度も勘で難を逃れてきたからな。その勘が若者から目を離すべきでないとしている。


目で追っていると、あの三人組が掲示板に向かい、ギルド長と二つ三つ言葉を交わしてからギルドを出た。一体どこへ行くんだ?


「おい、行くぞ」

「えっ、ギルド長はいいんすかっ?」

「いい」


そう短く応えて、すぐ後をつける。『え〜〜』だの煩いオラシオは無視して、急足で三人組の跡をつけると、副ギルド長の指示で幌馬車に乗り込んでいく。


遠目で幌馬車内には二十人ほどの冒険者達が腰掛けているように見える。どこで何をするかもさっぱり分からんが、乗り込むことにした。



ガタゴトと揺られながら冒険者らの会話に聞き耳を立てていると、行き先はケヒス村で、ウサギネズミの魔獣討伐だと分かった。先程から続くオラシオの小声のぼやきは無視している。


おっと、ケヒス村についたようだ。


「おい、みんな、ケヒスに着いたぜ。よろしく頼む」


取り纏めている奴が声を上げ、冒険者達は次々と魔の森に足を踏み入れていく。それに対して、あの若者達は緊張感もなく呑気に雑談しながら柔軟をしているのだ。


「ウサギネズミは結局のところウサギですかっ? それともネズミですかっ?」

「ウサギが先だからウサギじゃないかし‥‥か」


少し吃っているし、当てずっぽうじゃないか。討伐団長として、つい口が滑ってしまった。


「‥‥‥ウサギだ。群れを成せば凶暴なネズミとなる」


ふ〜ん、という空気が漂ったところで、柔軟を終わらせた三人が散り散りになって森へ突っ込んで行く。心配であの若者の背を追いながら小声でゴチる。



「おいおい、小さいが凶暴な魔獣だぞ?!」

「おいおい、尋常じゃない速さで駆けるな!」


若者と比べれば俺はおじさんだ。おじさんにはキツイ。オラシオなんか息が上がり、遥か彼方でヨタヨタしているじゃないか。アイツは後でしごくか。


「おいおい、ウサギネズミの集団が来たぞ!」

いつでも援護できるように剣に手を掛ける。


「おい‥‥‥‥」

唸るほど、卓越した腕前だった。



驚きで心臓が激しく動悸する。いや、走ったからか? 頭を軽く振ってから、指揮官としての職業柄、切替えて成すべき事を成す。黙々と途っ散らかしてるウサギネズミを回収していく。


他の若者との約束時間、二刻だったかは過ぎている。まだ走り回っている若者に後から何度も声を掛けて、やっと立ち止まってくれた。


「‥‥はあはあ、二刻は、過ぎて‥‥」


背に背負っていた袋を地面に下ろし、両手を膝の上に置いて息を整える。若者は『誰、このおっさん?』というように首を傾げているが、ウサギネズミが入った袋を掲げると澄んだ声で礼を言った。


外套のフードを深く被り、顔を覆う首巻きまでしているので、顔を窺うことはできない。だが、手渡す時に手袋と袖の隙間で陶器のような白い肌が見えた。


一応、言っておくが俺には変な趣味はない。たまたま袋を手渡す時に見えたんだ。平民にはない傷一つない白い肌‥‥いや、体質かも知れない、いや、光の加減か?


そしてこの事が俺をますます悩ます事になっていく。確証はないし、疑問ばかりが残る。あの若者はひょっとしたら、ひょっとするのかも知れない。


直接聞きたくとも、下手を打てばあの手の輩は姿を消しそうだ。冒険者ギルド長、トッドに尋ねるも『あら〜、そんな髪色だったかしらぁ?』と役に立たん。


部下の斥候に優れた者を常時付けて報告をさせているが、三人組は宿で過ごすことが多く、たまに希少価値の高い薬草採取の依頼を受けるだけらしい。


市場にはよく姿を現して飲み食いをすると報告にあったので、時が許す限り直に様子を探る事にした。


とある日は、市場でどうやパンやらパワーバンボンを口一杯頬張っていたり、酒場で麦酒を二、三杯、くいっくいっと空けていた。


「‥‥‥‥」




そうこうしている内に日が経ち、

そして、今日届いた報告書を前に頭を抱えているのである。


辺境伯領は縦に長い長方形で、上から北部、中部、南部。砦は西側の魔の森に面し、北部のガブリストーン砦、中部のロック砦、南部のムーンストーン砦と三つの砦がある。


その北部ガブリストーン砦の魔獣討伐団第二中隊の指揮官からの報告書だ。


『小隊四十五名(内新人三十名)が訓練中にキトス豹四頭と交戦となり、壊滅状態に陥った』


キトスと言ったら体長だけでも人の倍はある魔獣じゃないか。通常一頭を一小隊が全力で倒す魔獣だ。それが四頭‥‥。そして報告書の続きが問題だ。


『外套を深く被った三人の覆面冒険者らの獅子奮闘の働きで、キトス豹四頭の討伐完遂。その冒険者らは負傷者に手持ちの上級回復薬を飲ませ、二頭のキトス豹を報酬に消息を消した。


【総括】死者負傷者なし。キトス豹四頭討伐完遂、内二頭獲得 以上』


三人の覆面冒険者。最近見かけなかったあの三人の若者達‥‥‥‥。



押忍っ、今日も気合を入れ、地道にパズルのピースを埋めていく。


「忍耐の魔獣討伐団長が俺、オーランドだっ!」

「もうー、何すっか、突然? さっさとこの書類終わらせてくださいよー」




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