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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第二章 新天地

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42.寄り道でロック砦 黒鳥

しんと静寂で薄明かり、朝靄に包まれるようにして木陰に立つ。どこからか冷気が迫り寄る気配がした。


「やあ、久しぶり」

「ふふっ、久しぶりね、ルーク」


特級王宮魔術師『黒鳥』の一人、年下ながらも天才闇魔術師でもあり、光魔術師。金髪にくりくり目の美少年だ。しかし見た目で人を判断してはならないの代表である。


「朝起きんの大変だったぞー、ラナには蹴られるしよー」

「ちょっと、起こすの大変だったんだからね。感謝しなさいよっ」


目が合うと、ラナがにへらっとした笑顔で駆け寄ってきて、むんぎゅうっと抱きつかれた。


「や〜ん、やっとリリちゃんに会えたぁ」

火魔術師のラナはいつもぽかぽか温かい。


「よお、リリー。元気にしてたか?」

わしわし頭を撫でるのは水魔術師ロンだ。


二人とも同じく特級王宮魔術師『黒鳥』部員。赤毛でスレンダー、きりっとした美しい顔のラナ。精悍な顔立ちで無精髭の男がロンだ。


「ふふっ、元気よ。みんなに会えて嬉しいわ」


一年前、たった二月で何度も死にかけるという密度が濃い時を共に過ごした先輩達である。久しぶり会えて嬉しさが溢れてしまう。


「もうっ、リリちゃんの笑顔かわいすぎ」


ラナのほっぺぐりぐりに耐えながら、軽い近況を交わす。


「やあ、ロンもラナも久しぶり」

「もう、ルーク。一昨日会ったじゃない」


「そうだっけ? 寝てないし、時が分からなくなっちゃった。僕とお話してくれないのもいてね。困っててさ」


「お前、顔、血ついてるぞっ」


ルークは袖で軽く顔を拭い、ニヤリと陰のある魅惑的な笑みをキメてくれた。

背筋ぞくりである。



黒鳥では影を使った闇魔術、黒ひよこのピヨちゃんで連絡を取り合っている。あの洞窟調査の後に王宮魔術師団長でもあり、黒鳥隊長のロズウェルに連絡を入れたのだ。


そして、この日にロック砦近のひょろりとした若木の下で三人と待ち合わせの運びとなった。


ロンとラナは適当に転移で、ルークは闇と闇を繋げて通り抜けて来たそうだ。



「それで、リリちゃんの洞窟なんちゃら〜って?」

「魔の森の縦穴洞窟調査に一緒に来てもらいたいの」


「おお! なんか面白そうだな!」

最近、王宮魔術師より冒険者業に力を入れている? ロンの目がきらりと光る。


「王国とマルネス帝国との隣接地帯にあって、かなり深いから挑みがいはありそうよ」


「ふっ、その洞窟ってどんな感じ?」

静かに耳を傾けていたルークも興味が湧いたようだ。


ルークは好奇心をそそられると目を細めて蕩けるような笑みを浮かべる。


「まさに広大無辺で『探索』でも把握出来ないほどなの。一人での調査なら何月もかかると思うわ」


「リリちゃん、国境付近の『広大無辺』なら、その洞窟が帝国まで続いていても不思議じゃないわね。ロズウェル隊長には帝国に関する情報は些細な事でも集めろ、て言われているし。早速見に行きましょ」


ラナの言葉と皆の首肯を合図に魔の森へ転移した。地を割ったような峡谷やぽっかりと開いた漆黒の縦穴洞窟を目の当たりにすると皆が驚きの声を上げたり、ひゅーっと口笛を鳴らす。


「何? リリちゃん、ここ降りるの?」

「すげぇ、深けっーー!」

「ふっ、いい冥闇だね。僕が皆を下ろすよ」


なぜか洞窟の暗闇にうっとりした表情のルークである。ルークが片手を前にすると背丈程の黒モヤが現れ、そのまま通り抜けるように言われる。1歩進むと縦穴洞窟の下層にいた。


「うおぉ! すっげえーーー!」

「ほんっと、真っ暗闇ねぇ!」

「ふっ」


真夜中の一人と早朝の四人では心持ちが違う。縦穴洞窟の奥底から見上げると、ちょうど親指と人差し指で作る輪と同じ大きさの陽光が、遥か彼方にぽつんと見える。


「井戸の中に落ちて、見上げるとこんな感じなのかしら?」

「ふっ、そんな感じかもね。ちょっと、周り見てくる」


こぼれ落ちた呟きをルークが拾い、とんっ! と岩を蹴って一人情報収集に向かった。


今立っているのは平面的な一枚岩で、剣士二人が大立ち回りで訓練できるほどの大きさだ。


一望するとここは想像を遥かに超えた景色が広がっていた。どこまでも広がる空間に崩落した巨石群が折り重なり、この一枚岩もそんな中のたった一つでしかない。


途方もない歴史を刻み続けた大自然の驚異にただただ圧倒され、言葉を失う。巨石群と比べたら、ここにいる人間は豆粒ほどの大きさだ。実際、遠くにいるルークが豆粒の大きさである。


ひとしきり茫然と眺めていたら、ルークが洞窟の情報収集から戻ってきた。


「ふっ、闇風を使って二つの巨大岩が傾いてぶつかったような隙間やら、横に続く小さな洞窟も調べると沢山ありすぎて迷路状、実際迷路のようなものだね。


リリーが言っていた調査済のあの下方洞窟は除いて、気になる洞窟を五つほどに絞ったよ。そうだな‥‥僕がポールを連れてくるから、それぞれ一つずつ、単独行動といこうか」


ポールは同じく黒鳥隊員、陽気で元気一杯の土魔術師だ。トレードマークは麦わら帽子に肩にかけた手拭い。おっちょこちょいの破壊魔なので少し心配である。


「よし、了解だ!」


そんな心配をよそに、ロンは少年のように目をキラキラさせて、待ちきれないとばかりに声を上げた。


「印を付けておいたから、正面から右順でロン、ラナ。リリーと僕は光と闇魔術も使えるから深い洞窟、後の二つを担当することにしよう‥‥‥リリーはあっちね」


「ねぇ、ちょっと、待ち合わせの場所と時間、それと注意点とかは?」


「待ち合わせ場所はこの上、地上。時間は‥‥三、四日? 五日過ぎたら捜索隊入りね。注意は、幻覚を見せる闇魔獣もいるから防御魔術を常時発動。それと転移できるだけの魔力の保持だね。危険に遭ったら、即地上に転移って感じで」


後は適当で、と言うことで一時解散である。


「あ、そうだ。リリー、闇の魔獣は重力乗せて『闇檻』で捕まえてくれると嬉しいな。後で色々、調べたいから。手強そうだったら、二度と抜けだせない『闇孔』に突っ込めばいいよ」


「了解です、ルーク先輩」


ルークは一つ頷いて闇に紛れ、ラナとロンは足取り軽くとんっ! と岩を蹴って姿を消した。

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